東京大学名誉教授で『バカの壁』(新潮新書)などの著者である養老孟司氏

「彼の発言にはいろんな背景があると思いますが、ひとつは、社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。

 いまの若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。
ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです。

 僕は、定年前にさっさと大学を辞めてしまいました。大学ってのは、若い人が下にたまっている場所なんです。
『終活』をしている人も、子どもに迷惑をかけたくないという思いがあるのでしょう。これも順送りの考え方です。

 しかし、いまは長い目で世の中を見ることができない人が増えた。いまだけ、カネだけ、自分だけしか見えない。

 そりゃ、“いま”という断面で切ったら、不公平はいっぱいありますよ。
しかし、長い目で見ると、結局は順送りになっているんだということが、彼にはなかなか想像がつかないのだろうけど。

 彼の発言については、問題にする気も起きません。放っておけばいいと思います。でも、世の中は順送りなんだという、このことだけは強調したいですね」

https://smart-flash.jp/sociopolitics/277594/1/1/