https://news.yahoo.co.jp/articles/19f3d373bad3ef0bf1e6a7e33f25417612963ba3
「社長のおごり自販機」2年目の急伸設置台数3倍、雑談を生み出す仕掛け想定を超えた使われ方も
社員証を2人同時にタッチすると、それぞれ無料でドリンクがもらえる「社長のおごり自販機」。導入2年目にして設置台数は480台を超え、前年比3倍の伸びをみせています。企業間の口コミで広がっているという自販機について担当者に話を聞きました。
社長のおごり自販機とは
サントリー食品インターナショナルが展開する「社長のおごり自販機」。
まずは、社員証を持った2人で自販機まで行き、飲みたい商品を決めます。
決まったら、自販機のセンサー部分に2人同時に社員証をタッチ。
10秒以内に商品ボタンを押すことで、2人とも無料で飲み物がもらえるという仕組みです。
「おごり」というネーミングは、ドリンク代を導入企業が負担することに由来。
同じペアだと1週間に1回しか使えなかったり、使える時間や曜日を限定したりと、導入企業ごとにカスタマイズできる点も特徴です。
「ただし、10秒という設定については変更できないようにしています」
そう話すのは、VM事業本部マーケティング部の松本俊さん。
あらかじめ2人で事前に話し合うことで会話を増やしたい。
「早く押さなきゃ」というゲーム性や、間に合わなかった時の盛り上がりも楽しんでほしい。
そんな思いが込められているそうです。
担当者に聞きました
「窓際に置かれて風景の一部となっている自販機を、フロアの真ん中に持ってくることはできないか」
自販機好きの担当者のそんなアイデアから生まれたこのサービス。
福利厚生としての無料だけでなく、職場で雑談のきっかけを作るコミュニケーションツールとして自販機を活用できないか。
そんな考えから、社員証を同時にタッチするといった仕組みを採り入れたそうです。
「当初は『カンパイ自販機』『やってみなはれ自販機』といったネーミング案もありました。社内でテストをしていた時に多くの社員が『社長、ゴチになります!』と言っていたことから現在の名称になりました」
2021年10月から首都圏エリアでサービスを開始し、まもなく全国展開に。
設置台数は開始1年目で約120台、2年目で約360台となり、合計すると480台超に。
前年比3倍という伸びは、想定を超える勢いだといいます。
「サービス開始当初に報道で取り上げていただいたり、福利厚生の展示会に出展したりといった機会がありましたが、その後は導入していただいた企業からの口コミで広がっています」
「無限カード」を作成する会社も
導入した企業に対しては、利用状況などのデータを提供。
そのやりとりの中で、想定していなかった使われ方に気づくこともあるそうです。
「たとえば『来週は営業と総務のペアで』『利用する前にお互いの好きな食べ物を紹介して』といったお題を決めて、雑談を促している企業もあります」
社員証利用とは別に、利用回数に上限のない「無限カード」を作成する会社も。
そのカードを上司ではなく新入社員に持たせることで、会話のきっかけ作りに役立てている会社もあるそうです。
また、企業に限らず、賃貸マンションの入居者向けや、病院スタッフ向けといった導入例も。
「ある病院では『来院回数に応じてスタンプをためるなどして、患者さんも利用できるようにしたい』といった構想をお持ちでした」
意図的に行列を作って
「あいさつ以上・食事未満」の気軽なコミュニケーションに役立っているという社長のおごり自販機。
上智大学言語教育研究センター教授で雑談研究者の清水崇文氏さん監修のもと、設置企業120社へアンケートを実施。
「雑談がちょっと生まれやすくなる5条件」として、以下の点を導き出したそうです。
・終わりの時間がよめる
・ながら・ついで
・共同作業
・目の前にある共通の話題
・適度な距離でヨコ並び
サントリー食品インターナショナルの社内では利用時間を15〜16時とあえて短く設定。
そうすることで意図的に行列を作り、ペアの2人だけでなく前後の会話を促しています。
また、何が出てくるかわからないボタンを設置することで、会話のネタにしたり同僚と交換したりと、雑談のきっかけ作りに一役買っているそうです。
今年2月に前任者から引き継ぎを受けて担当になった松本さん。
ワクワク2割、不安8割で始まったそうですが、実際に担当してこの自販機の可能性を感じているそうです。
「導入する企業も、利用する社員も、そしてサービスを提供する我々も笑顔になる自販機です。これからも最強サービスとして磨いていきたいです」