「誰も信じない方が安全だ」などに同意できるかで判定
Neuvonen氏らは、東フィンランドの2地域に住む65~79歳(平均71.3歳)の2,293人を、1997年から8~11年ほど追跡調査し、
シニカルの度合いと認知症の関係について調べた。ここでいうシニカル度は皮肉屋の度合いではなく、自分以外の人々は利己的で信頼できない敵、社会はウソに満ちている―との考え方、
心理学などでいう「シニシズム的不信(cynical distrust)」の度合いを指す。
これまでの研究で、シニシズム的不信と認知症、アルツハイマー病が関係するという結果が報告されていたが、その度合いが危険性の程度に影響するかを調べたのは初めてという。
シニカル度は、「ほとんどの人は出世のためにウソをつくかもしれない」「誰も信じない方が安全だ」などに、どの程度同意できるかの回答から判定した。
最終的なデータが取れた622人を分析した結果、シニカル度で3つに分けたうち、最も強いグループの認知症にかかる危険度は、最も弱いグループの3倍以上だった。
シニカル度が最も強いグループは、最も弱いグループに比べて年齢、BMI(肥満度)、血圧(収縮期)、血糖値(空腹時)が高く、
退職者が多く、教育を受けた期間が短く、自己申告による健康状態が悪い傾向があったという。しかし、認知症にかかる危険度の差は、こうした要素の影響を取り除いた上でのものだった。
プラス思考が認知症を予防か
Neuvonen氏らはさらに、シニカル度と死亡率の関係についても1,146人で分析した。その結果、年齢と性別の影響のみ取り除くと、
シニカル度が最も強いグループで死亡率が高まったが、その他の影響も含めて取り除くと、統計学的に意味のある差は認められなかった。つまり、死亡率との関係は学歴や就職状況、収入、生活習慣、健康状態によって左右される、ということになる。
今回の結果について、Neuvonen氏らは「考え方や行動パターンが、認知症を予防する上で重要なことが示唆された」と結論。さらに「プラス思考になることで、生活の質を改善できるかもしれない」との見解を示している。
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