【シドニー】音声認識や機械学習を手掛ける豪アッペンは、米アルファベット傘下のグーグルなど世界最大級のハイテク企業の多くが手掛ける人工知能（AI）システムのトレーニングを支援してきた。そのアッペンが今、そうした機械に取って代わられる危機にある。
かつて33億ドル（約5000億円）の価値があったアッペンは、北米のオフィスを閉鎖するほか、最高経営責任者（CEO）を交代させた。最近、売上高の30％に貢献していたグーグルとの関係が終了し、それによって悪化した「出血」を抑えるためだ。アッペンは1週間前、ナスダック上場のデータエンジニアリング会社イノデータがアッペンの全株式を1億100万ドルで取得する提案を撤回したと発表した。
アッペンの苦境は、AIによって世界のビジネスがいかに急速に変容しており、その開発に寄与したハイテク企業も例外ではないことを物語っている。アッペンは長い間、いわゆるグローバル・クラウドに依存してきた。そこでは、100万人を超えるギグワーカー（インターネット経由で単発の仕事を請け負う労働者）が通常は自宅で、手作業でデータ分析を行っている。彼らの目的は他の職からの収入を補うためであることが多い。
現在では、AIを搭載した機械がその仕事の多くを担っている。アッペンは近年、多角化に取り組んでおり、中国の自動車メーカーや小売企業から一定の支持を得ているが、ハイテク企業という顧客を失ったことによる打撃を帳消しにはできていない。アッペンとグーグルとの契約は今月終了した。
ジェフリーズのアナリスト、ウェイ・シム氏は「顧客をもう1社失うようなことがあれば、かなり致命的な打撃になるだろう」と述べた。アッペンの株価は2020年8月以降、約98％下落している。
アッペンの時価総額がピークだった頃、それを支えていたのは、売上高の約80％を占めた米大手ハイテク企業との契約だった。アッペンは、同社の人間集団は、機械があらゆる言語（一部地域でしか話されていない言語も）を認識するための訓練を支援することができると述べていた。
https://jp.wsj.com/amp/articles/this-company-helped-make-ai-a-reality-now-the-machines-are-crushing-it-9b211803
