陸上自衛隊東北方面特科連隊情報中隊に所属していた岩手県の20代男性隊員が2020年に自殺した際、部隊が遺書を遺族に無断で撮影し、内部で共有していたことが判明した。遺族の弁護団が29日、記者会見して明らかにした。今月1日、国が遺族に謝罪する内容の調停が盛岡簡裁で成立した。

 陸自岩手駐屯地(岩手県滝沢市)に勤めていた男性は20年10月5日に死亡した。弁護団によると、その直前、当時の中隊長が部下に指示し、遺族宅で了承を得ないまま男性の遺書を撮影。複数の幹部らに画像を共有したり閲覧させたりした。

 遺書の撮影について部隊側は遺族に「(男性の)捜索のため」と説明したという。遺書にはパワハラをうかがわせる内容のほか、キャッシュカードの暗証番号や預金額などの個人情報も記されていた。遺族は22年10月、プライバシー権を侵害されたなどとして国家賠償請求の調停を申し立てた。

 弁護団によると、防衛省は21年、男性の自殺を公務災害に認定。時間外労働が月200時間を超えたこともあった。男性は当時、家族に「隊を辞めたいが辞めさせてもらえない」などと漏らしていたという。陸自東北方面総監部(仙台市)は「民事調停案件なのでコメントできない」としている。

 会見した小野寺義象弁護士は「自衛隊では現在、パワハラなどの人権侵害が多発し自殺者も少なくない。今回は遺族の心情まで配慮せず遺書を取り扱った極めて深刻な問題だ」と強く指摘。弁護団は今後、パワハラの有無など男性の自殺原因についても詳しく調査し、国賠訴訟も検討する。

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