ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで先週起きた襲撃事件について、ウラジーミル・プーチン大統領が「イスラム過激派」の犯行だと認めた。

この事件では、武装勢力「イスラム国(IS)」が犯行声明を出している。しかしプーチン氏は、ウクライナの関与を主張し続けている。

ウクライナに責任があるとするキャンペーンはどのように展開されたのか。ロシア当局の声明、メディア報道、ソーシャルメディアへの投稿をもとに、BBCヴェリファイが検証した。



責任を示す偽の主張

さらに数時間たった23日午前3時13分、ロシアの主要テレビ局NTVは、ウクライナ高官が関与を認めたとする映像を放送した。

映像では、ウクライナのオレクシー・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記が、「今日のモスクワは楽しい。楽しみがたくさんあったと思う。このような楽しみを、もっと頻繁に用意してあげられると信じたい」と述べているように見える。

しかしBBCヴェリファイは、この映像について、ウクライナのテレビ局が1週間前に行った2本のインタビュー映像を加工したものだと突き止めた。

ロシアのプーチン大統領は24日に公の場でウクライナを非難した。

プーチン大統領は、襲撃者がウクライナへ逃亡しようとするところを拘束したと述べ、「そこには国境を越えるための隙間が用意されていた」と主張した。

しかし、ロシアはこの「隙間」に関する証拠を示していない。

BBCヴェリファイは、容疑者らがどこに向かっていたかを独自に確認することはできない。しかし、彼らが逮捕される様子を撮影した映像や写真をいくつか検証・確認した。プーチン氏の主張とは裏腹に、逮捕はウクライナ国境から遠く離れた場所で行われていた。

逮捕された容疑者のうち2人は、背景の状況などから、ウクライナ国境から約145キロメートルの地点で撮影されたことが分かった。

ウクライナは襲撃への関与を否定している。一方、武装勢力「イスラム国(IS)」が、メッセージアプリ「テレグラム」上のチャンネル「アマク」を通じ、犯行声明を発表した。

しかし、こうした証拠にもかかわらず、ロシアはウクライナを非難し続けている。

ロシアのテレビ局RTのマルガリータ・シモニャン編集長はソーシャルメディアで、襲撃者らが自爆ベストを着ておらず、「死ぬ意図がなかった」として、ISに所属していないと指摘した。

ISは攻撃者に生きたまま拘束されないよう繰り返し警告しているが、これまでに逃走した例もある。

襲撃者らが殺害状況の非常に生々しい映像を撮影していること、その映像でISの襲撃者に共通するスローガンが唱えられていること、ISの公式メディア・チャンネルが映像を配信していることは、ISのこれまでの手口と一致している。

ISがロシアを標的にしたのは今回が初めてではない。2015年と2018年にも大規模な攻撃を実行しており、ここ数年でも規模の小さな攻撃があった。

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1647875380o