スマホで活動家撮る大学生 過激派から右翼まで きっかけは校則問題

 同世代の「活動家」と呼ばれる人たちの言葉をドキュメンタリー映像に記録する大学生がいる。極左暴力集団と呼ばれる過激派から民族派右翼まで。なぜいま活動家を対象にし、撮影で使うスマートフォン越しにその姿はどう映るのか。

 明治学院大4年の中村眞大さん(21)は昨秋、過激派組織・中核派の活動拠点「前進社」(東京都江戸川区)にいた。住宅街にある約6メートルの巨大な緑の塀に囲まれた5階建て。食堂や浴室、焼却炉や喫煙所などがそろい、中核派の中心メンバーらが共同生活をしている。

 中核派は、1971年に警察官が殺害された渋谷暴動事件や、90年に京都御所に迫撃弾が撃ち込まれた事件など500件以上に関わったと警視庁がみる組織だ。

 中核派全学連の赤嶺知晃委員長と矢嶋尋副委員長が、中村さんを建物内に入れ、質問に答えた。2人は中村さんより少し年上でほぼ同世代。記者も見守る中で、赤嶺委員長は「暴力革命が必要だと思っている。忌み嫌われるのはかまわない」と、時に笑顔も交えて説明した。「資本主義に対しては暴力革命を実現する中で労働者階級が解放される」

 赤嶺委員長は「警察から優しいと思われる組織になりたくない」とも言った。

 中村さんは2022年から、気候変動やジェンダー格差などの課題解決に取り組む大学生や、国政政党の青年部門、右翼団体の若者ら同世代の約120人に会い、ユーチューブなどで紹介してきた。「どんな思想に対しても偏見を持たずに対話したい」という思いが根底にあるという。対象とは意識して距離を取ると話す。

 中核派全学連はどう見えたのか、記者は後日尋ねた。中村さんは「長い歴史のある組織で、そこに入った若者が自分の言葉で語っていない印象を受けた」と話した。「難解な言葉遣いでは一般の人を巻き込めないのでは」

 中村さんは23年3月には、民族派と呼ばれる右翼団体の男性を取材した。

 中村さんと同年代の男性は、若者が集う原宿で街頭演説し、SNSでの発信にも力を入れていた。「怖いイメージ」を払拭(ふっしょく)するため、黒塗りの街宣車を白に塗り替えたり、神宮外苑の再開発など身近な政治課題から演説を始めたり。男性は「若者に受け入れられるため右翼も変わる必要がある」と話したという。変わろうとする姿は印象に残ったが、団体の主張には、中村さんには賛同できない点もあったという。

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