小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントで健康被害が拡大していることで、同社が成長を目指していた中国での事業にも暗雲が垂れ込めている。紅麹サプリは中国でも通信販売され、訪日した際に購入した中国人も多い。
被害は報告されていないが、イメージダウンが長期化すれば、つかみかけた海外への飛躍の足掛かりを失うことになりかねない。

「サプリを買った訪日客にどう返金するのか。因果関係が確認されたら補償はどうするのか」

3月29日の記者会見で、同社の小林章浩社長にそう強い口調で質問したのは、中国国営中央テレビ(CCTV)の記者。CCTVは前日の小林製薬の株主総会も取材しており、中国での関心の高さをうかがわせた。

「情報を正確に入手して補償の相談をしたい」と答えた小林氏。その2週間前の15日には、中国・合肥市の日用品子会社の新工場完成を現地で祝い、「中国のみなさまの快適な生活の実現に貢献したい」と宣言したばかりだった。

中国は小林製薬の海外戦略の鍵を握る。冷却シート「熱さまシート」やカイロなどが人気で、令和5年12月期の海外売上高422億円のうち、米国の40・3%に次いで中国(香港含む)が32・3%を占めた。前期比伸び率は米国の3・5%を上回る9・4%だった。

7年までの中期経営計画では「全世界での市場浸透とシェアアップを目指す」とし、中国(香港除く)での売上高は5年の105億円から7年に171億円以上に引き上げる目標を掲げる。

ところが紅麹問題では中国や台湾での販売状況や被害情報を把握し切れず、顧客や報道への対応が後手に回っている。会見では香港メディアの記者から「海外ユーザーを軽視していると思われても仕方ない」と非難の声が上がった。

https://www.sankei.com/article/20240406-HKMEXEJFJZIARACYMZWAHX6IY4/