欧米で活躍する日本のアーティストが増えており、XGはそのうちの1組だ。XGがK-POPの手法を取り入れる一方、YOASOBIやAdoなど他のJ-POPスターたちは、もう一つの日本文化であるアニメに楽曲を提供するなど、それぞれの手法で海外を含めたファン層の拡大を進めている。

何十年もの間、22億ドル(約3300億円)規模の国内市場に大きく依存してきた日本にとって、これは劇的な変化だ。調査会社ルミネイト・データによれば、世界で再生された上位1万曲に占める昨年の日本の音楽の割合は前年比で50%増加し約2.1%となった。シェアは小さいが、約2.4%だった韓国語の楽曲の規模に近づいている。

XGの躍進には、米国に次ぐ世界2位の規模を持つ日本市場がストリーミングに移行し、J-POPの楽曲がより広く行き渡るようになったことが貢献している。日本レコード協会によると、日本におけるデジタルソースからの収入は、18年の約21%から昨年は35%に上昇した。

西洋音楽に触発されて約100年前に誕生した日本のポップスは、20世紀半ばにはフォークやロックへと進化。1980年代にはエレクトリックサウンドやジャズ、フュージョンを取り入れて「シティ・ポップ」というジャンルを作り上げた。

旧ジャニーズ事務所に代表された従来のプロダクションは、アーティストの著作権を管理することで、業界でほぼ独占的な力を築いた。しかし、アーティストの活動はおおむね日本国内に限定されたほか、ソーシャルメディアやストリーミング・プラットフォームを敬遠したことで、より大きなブームを生み出すチャンスを逃した。

さらに旧ジャニーズ事務所を巡る一連のスキャンダルを受けてスポンサー放送局は同事務所のタレントを敬遠するようになり、市場に空白ができた。当面の勝ち組は、ソーシャルメディアやストリーミング・プラットフォームを通じて徐々に人気を集めているK-POPグループや日本の新人アーティストたちだ。XGのYoutubeでのフォロワー数はキング アンド プリンスを上回っている。

日本最大のメディア・コングロマリットであるソニーグループは、日本最強の文化資産で、世界中にファンを持つアニメを最大限に活用することで、勢いに乗っている。

ソニー・ミュージックのバックアップを受け、ネットフリックスで配信されているアニメ「推しの子」に向けたYOASOBIのオープニング・ナンバー「アイドル」は、アジア全域とアメリカで大ヒットしている。彼らは今年、米カリフォルニア州で開かれるコーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバルに出演する。

顔を隠し、シルエットだけで活動することで知られるAdoは、漫画映画「ONEPIECE FILM RED」の主題歌でチャートのトップを飾り、アップルのグローバル100チャートで日本の曲として初めて1位を獲得した。ユニバーサルミュージックと世界最大のアニメ・ストリーミング・プラットフォームであるソニーのクランチロールのサポートを得て、Adoはアジアと米国、欧州で初の世界ツアーを行っている。

ルミネートによると、米国と韓国のZ世代の音楽リスナーの約20%が、アニメを通じて日本の音楽を発見しており、「アニメを通じて音楽を発見する世代は、音楽のストリーミング再生回数が多い可能性も高い」という。

XGのメンバーは、米国に照準を合わせている。21歳のボーカル、CHISAはスーパーボウルのハーフタイム・ショーでパフォーマンスやビルボードの上位に入ること、コーチェラでのライブの実現を夢見ているとし、宇宙でのライブも素晴らしいだろうと語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-03-24/SAO7JCT0AFB400