中国で百日咳が急増、死者13人の報告も WHO「乳児の死亡原因で大きな割合」

乳児のけいれん発作を特徴とする百日咳菌による急性気道感染症(百日咳)が中国で大流行の兆しをみせ、懸念が高まっている。今年に入り、最初の2か月で感染者数が昨年同時期の20倍以上に急増し、すでに13人の死亡が報告されている。米誌「タイム」が10日、その原因について伝えた。

中国の国家疾病予防管理局によると、1月~2月の百日咳の感染者数は、2023年の同時期が1421人だったのに比べて大幅増の3万2380人だった。これは昨年1年間の感染者数に匹敵する数字だ。

中国では百日咳のワクチンは無料で、通常は乳児に対し、ジフテリアと破傷風にも有効な三種混合ワクチン(DPT)を接種している。専門家らによると、乳児がワクチンによって得られる免疫力は、成長とともに思春期になるにつれて弱まる傾向がある。また、百日咳はワクチンで予防可能な小児疾患であるにもかかわらず、発生率が上昇しているというのだ。

最初は風邪に似た症状があらわれ、少しずつせきの回数が増え、息を吸うとヒューという音が出るとされる。医学情報サイト「MSDマニュアル」(プロフェッショナル版)によると、百日咳による重度の発作とそれに起因する低酸素症により、脳、眼、皮膚、粘膜への出血が起こることがある。また、脳出血、脳浮腫および毒素による脳炎により、痙性麻痺、知的障害などを起こすこともあるという。

中国疾病予防管理センターの沈洪兵所長は3月、百日咳のワクチンを改良するか、予防接種プログラムを調整するかを決定することが必要だと指摘。「百日咳のまん延を予防し、制御するには細心の注意が必要」と訴えた。

同センターによると、中国では百日咳の感染者数が14年から増加傾向にあり、19年には年間で3万人を超えた。コロナ禍明けの22年暮れと23年には、合計で約4万人に達した。

だが今回、大流行の兆しが出てきた原因としては、コロナ禍での混乱や免疫力の低下、遺伝子変化などが影響している可能性があるとタイム誌は解説する。加えて、高齢患者は不規則な症状を発症する場合があり、それが誤診につながり、知らぬうちに百日咳菌を運び、感染を広めていることの一つの理由だという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/006016c4ec7098ff859e217ce78b65b065bb6cf9