西鉄バス乗っ取り、被害者が事件を振り返る初の著書…医療少年院での面会にも触れ
4/15(月) 8:10配信

 2000年5月に起きた西鉄高速バス乗っ取り・殺傷事件で重傷を負った山口由美子さん(74)(佐賀市)が16日、事件を振り返る初の著書「再生 西鉄バスジャック事件からの編み直しの物語」(岩波書店)を出版する。当時17歳だった少年が起こした事件を機に、子育てや犯罪被害者のことを考え続けた24年間の歩みをつづった。

 山口さんは、親交が深かった幼児教室主宰の塚本達子さん(当時68歳)と福岡市に向かう途中、事件に巻き込まれた。塚本さんは死亡し、山口さんは顔などを切りつけられて約1か月半、入院した。

 事件後、少年が不登校からひきこもりになっていたことを知る。理解してくれる人と出会えなかったことが事件につながったと考えた。「事件の時、彼もつらかったはずだ」。自身の長女も一時、不登校となり、つらい思いをさせていた。塚本さんの幼児教室には長女を含む3人の子どもを通わせており、子どもを「受け入れる」とは「自分の力で立ち上がるまでじっと待つこと」という塚本さんの考えに共感していた。

 事件の1年後、不登校の親の会を仲間と発足させ、代表に。その後民家を借りて子どもの居場所「ハッピービバーク」を開いた。活動は、場所を変えながら現在も続けている。20年近く、刑務所での月1回の講話も行っているほか、不登校や、犯罪被害者関連の講演活動も続けている。

 本のもとになったのは、事件から12年後に社会人入学した九州大大学院での修士論文。事件直後に少年の両親と、そして05年に京都医療少年院で3回、少年と面会したことについても触れている。少年との面会は、当時の少年院長の決断で実現した。

 両親については、大人の論理で話していて、子どもの立場や気持ちや考えを理解しようとはしていないと感じたこと、少年からは「大変なことをして申し訳ありません」と深々とこうべを垂れ、心からの謝罪だと受け止めたことを記した。「一人の人としてちゃんと生きてほしい。ただそれだけです」と心情を吐露する。



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