約10年に及んだ札幌五輪・パラリンピックの招致活動が29日、「一区切り」を迎えた。札幌市はこの日に開かれた調査特別委員会で、失敗に終わった招致活動を検証した結果を報告。市議からは活動で得た効果を評価する声が上がった一方で、招致活動を進めた市の姿勢に対する批判も相次いだ。

今回で同委員会は最後となり、市は今回の検証を踏まえた報告書を新年度にまとめる方針だ。

 検証結果は、秋元克広市長が昨年12月に招致活動の「停止」を発表したことを受けた。33のアスリートや競技団体、有識者らにヒアリングを実施し、招致活動の取り組みや賛同が広がらなかった原因を検証した。

 29日の特別委で答弁に立った市幹部は、東京大会の汚職・談合事件による不信感の高まりやコロナ禍での活動縮小に言及。その上で「不信感を払拭(ふっしょく)し、誰もが開催の意義や効果をイメージできる明確なメッセージが必要だった」と述べた。

 これに対し、旧民主系会派の議員は「(社会の)状況変化を踏まえながら、市民の意識に向き合った活動をどこまでおこなったか。市民意識に向き合う取り組みが十分であったとは言い切れない」と指摘。市幹部は「市民意識に向き合う取り組みに努めたが、理解を広げられなかった」と弁明した。

 この議員は「行政主導の招致には限界。大きな課題を残した」とも強調。東京大会の汚職やコロナ禍を念頭に、市幹部は「関係者が積極的に招致活動に取り組むのが難しい状況となり、市が主体となった情報発信だった」と振り返り、「行政主導ではなく、アスリートなどより関係団体を巻き込んだオールジャパン体制を構築する必要があった」と述べた。

札幌市による五輪招致をめぐっては、これまでに約27億円の関連費用が充てられてきた。市幹部は特別委で、招致活動の成果として街づくりの加速やバリアフリー化、官民連携の取り組みなどをあげた。(古畑航希)

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