児童ポルノ所持に無罪 大阪地裁「写真では18歳未満か疑い残る」

児童の性的動画を持っていたなどとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪などに問われた男(53)の判決で、大阪地裁の松本英男裁判官は「被写体が18歳未満か合理的な疑いが残る」として、同罪を無罪(求刑・懲役8カ月)とした。

 男は2022年3月、スマートフォンに児童ポルノの動画を保存していたなどとして起訴された。被写体が誰なのかは特定されておらず、「動画に映っている女性が18歳未満か」が争点だった。
 捜査現場では児童ポルノかどうかを判断する場合、体の発育状況などから性的な成熟の度合いを評価する「タナー法」が広く用いられている。

裁判官「タナー法での判定時、慎重な判断必要」
 検察側は、動画の写真資料をタナー法を用いて鑑定した小児科医の意見をもとに、被写体は「小学校高学年から中学生の女児と考えられる」と主張。弁護側は「間違いなく18歳未満とは言えない」と反論した。
 松本裁判官はまず、性的な成熟には個人差があることや判定には主観が入ること、画像の解像度の問題を踏まえて、「タナー法で年齢を判定する際は慎重な判断が必要だ」と述べた。
その上で、今回の写真資料は不鮮明で映った人物の人種や国籍も断定できないことから、「日本人女性の性成熟度の研究をそのまま援用できるのかは疑問がある」と指摘。体つきからの年齢判断に統計学的な合理性があるとしても、「具体的な例外を許さないものとは考えられない」として、「18歳未満」とする検察側の主張には合理的な疑いが残ると結論づけた。
 弁護人の川崎拓也弁護士は「主張が一部認められなかったのは遺憾だが、画像からの年齢の判定には慎重さが必要だという判断は妥当だ。近年は写真の加工も当たり前になっており、捜査にも慎重さが求められる」と話した。(山本逸生)

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