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アパートに隠した1キロの乾燥大麻 元売人が明かす客層、営業手法…

大麻所持で摘発される若者が増えている。なぜ大麻に手を出したのか。大麻取締法違反で実刑判決を受けた元使用者と元売人の2人が、刑務所「美祢社会復帰促進センター」(山口県)で取材に応じた。

 20代の男が初めて大麻を使ったのは、大学2年生のころだった。

 中学時代から音楽を聴くのが好きだった。よく見たミュージックビデオには、海外のラッパーが大麻のようなものを吸うシーンがあった。

 「吸ったら、楽しい気持ちになれそうだな」。大麻所持は犯罪だとわかっていたが、ネットで調べるうちに、覚醒剤や合成麻薬MDMAと比べて、危なくないと思い込むようになった。

 そんな時、一緒に遊んでいた友人が前ぶれもなく、乾燥大麻を取り出した。

 驚いたが、興味のままに大麻を分けてもらい、初めて吸った。怖い気持ちと緊張から、この時は少しだけ。想像していた「楽しい気持ち」は全くなく、「こんなもんか」と思った。

 実際に大麻を吸うと、罪の意識が消えた。「一線を越えてしまった感じです」。「楽しい気持ち」を知りたいという欲求は高まる一方だった。

 大麻を手に入れようと、ツイッター(現X)上で大麻の隠語を入力して検索した。簡単に売人とつながった。秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で連絡を取ると、受け渡し場所として、人目につかない住宅街などを指定された。

 何度か使うと気分が軽くなり、「楽しい気持ち」がわかった気がした。実家の部屋で友人と一緒に吸い、家族にはお香だと言って、においをごまかした。

逮捕後、二度としないと約束したが…
 週に1回、3〜5グラムの乾燥大麻を買うのが当たり前になった。1回1万5千円ほど。コンビニでのバイト代は、乾燥大麻や大麻リキッドに消えた。

 「逮捕の1年前ぐらいからは中毒だったと思いますが、気付かないふりをしていました」

 逮捕されたのは、大学4年生の夏だった。授業の空き時間に車で寝ていたところ、警察官の職務質問を受けた。乾燥大麻約1・5グラムを所持していたとして、大麻取締法違反容疑で現行犯逮捕された。裁判で、執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 もう二度としない、と家族と約束した。だが、判決から約3カ月後、大麻所持の疑いで再び逮捕された。

 吸いたい気持ちを抑えられなかった。みずから売人に連絡し、大麻を買った。「家族にやめなさいと言われても手を出してしまった。先のことをもっと考えて生きる必要がありました」

 実刑判決を受け、今も服役中だ。出所後、また手を出してしまうのではないか、不安はある。「自分で乗り越えないとやめられない」と言った。