https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240426/k10014433871000.html
便利な物流どう維持する?「2024年問題」解決のヒントは
4月からトラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用され輸送力の不足が懸念される「物流の2024年問題」われわれの暮らしに大きく関わる問題ですがその一方でこれを機に業界で長年課題となってきた「長時間労働」や「低賃金」を見直そうという動きも出ています
業界はどう変わっていくのかそして私たち消費者にできることとは?
倍率45倍!応募者殺到のワケ
福岡県に本社を置く従業員数69人の運送会社
全国的にドライバーの人手不足に苦しむ会社が多いなかこの会社の求人には今応募者が殺到しています
去年1年間の実績は15人の求人に対して応募者は688人
倍率は45倍です
その人気ぶりを支えるのが独自のSNS戦略です
この会社では知名度を上げようと4年前からSNSに力を入れ始めました
アップされているのはドライバーの仕事ぶりを紹介するものだけではありません
SNS専属スタッフが業務に直接関係ないコント動画なども発信
中には再生回数が400万回を超えたものもあります
動画を見た人がどれくらいの割合で求人に応募しているかなども分析し採用活動を強化しています
Gライン 荒牧敬雄社長
「会社自体が運送会社らしくない運送会社を目指そうとやっていますSNSで拡散力があがったことでいま働いている子たちと同じような感性価値観を持つ方々を選ぶ選考ができています」
即戦力より新戦力
この会社が採用において掲げているのが“即戦力より新戦力"
運送業界の未経験者を積極的に採用していていま会社に所属するドライバーの9割が業界未経験者だと言います
全国の大型トラック運転手の平均年齢が49.9歳の中SNSの効果もありこの会社のドライバーの平均年齢は33歳となっています
ドライバー 元料理人(25歳)
「もともと料理人だったのでドライバー経験はないです会社のユニフォームもおしゃれでどこに行っても目立ちますし若い層がたくさんいるのでチャレンジしてみようかなと思いました」
ドライバー 元自衛隊員(29歳)
「戦闘機の整備をしていましたもともと運転が好きなのとトラックがかっこいいなという憧れがありました」
荒牧社長は運送業界の価値観が染みついた経験者ではなく未経験者をあえて採用することで生産性が上がっていくと言います
荒牧社長
「今までの運送業界の商習慣として長く働いて走れば走るほど稼ぐことがあったと思いますドライバー経験者は自分1人がやったほうが早いとか一匹狼みたいな方が多かった経験者の経験値はありがたいんですけど我々が目指すべき方向にそこは必要ないうちの場合はより短い時間でどれだけ稼げるかしっかりとゼロから教育をして連携を高めて情報共有することによって生産性が格段的に上がっていきます」
独自の評価基準で効率アップ
「より短い時間でどれだけ稼げるか」を追求するこの会社
そのため独自の評価基準を導入しています
それが“1時間あたりの売上高"です
評価は個人ではなく営業所単位で行います
例えばこの2つの営業所
Aの営業所のほうが売り上げが4万円多いですが1時間単位の売り上げでみると労働時間が短いBの営業所のほうが1000円高くなります
この場合Bの営業所のほうが給料やボーナスの評価が高くなる仕組みです
例えば荷物が予想以上に多い現場には周辺で働いている余裕のあるドライバーたちが駆け付け一緒に荷積みや荷下ろしをするなど短時間で作業を終わらせていきます
こうしたチームワークが効率よく稼ぐことにつながっていくのです
荒牧社長
「いろんな法律や価値観が変わっていく時こそまさに変革の時冷静に分析して早めに力強い一歩を踏み出したいです業界の常識は非常識だと思いながら業界のイメージが変わっていくよう頑張ります」
未経験活用で効率アップ 専門家はどう見る?
この運送会社の取り組みをどう見ているのか
物流業界の労働問題に詳しい立教大学の首藤若菜教授に林田理沙アナウンサーが聞きました
林田アナウンサー
「未経験者を積極的に採用していく動きはどうご覧になりますか」
首藤教授
「未経験者だからこそ感じる違和感があると思いますぜひこれおかしくないですかという声を上げていただきたいですこれがこの業界で長年働いてきたドライバーさんは『この業界ではそれが商慣行で当たり前なんだ』とか『それが当たり前だ』と感覚が麻痺している可能性はあります」