【社説】自治体4割消滅 婚姻・出産増へ大胆施策を

少子化の流れを変える、もっと大胆な施策が必要だ。民間有識者らでつくる「人口戦略会議」は、全体の4割に当たる744市町村で、2020年から50年にかけて若年女性人口が半減し、消滅する可能性があるとの報告書を公表した。

14年に日本創成会議が公表した分析では、消滅の可能性のある市区町村は896だった。数が減ったのは主に外国人人口の流入増を見込んでのものだ。少子化の基調は変わっておらず、むしろ拍車が掛かっている。

一極集中是正進まず

分析では全国1729市区町村に住む、子供を産む中心的な年齢層である20〜39歳の女性人口の増減に着目。このうち減少率が50%以上の市町村を「消滅可能性自治体」と位置付けた。一方、減少率が20%未満で100年後も若年女性が現在の5割近く残る自治体を「自立持続可能性自治体」とした。若年層の雇用や子育て環境が整った65市町村がこれに該当する。

新たな概念として登場したのが、出生率が低く、他地域からの人口を吸収して日本全体の人口減少を加速させる「ブラックホール型自治体」だ。東京都の16区など都市部の25市区町村である。最も出生率の低い東京など都市部に出産適齢期の女性が流入することで、少子化、人口減に拍車が掛かっている。

政府はこの10年間、東京への一極集中是正を目指し、政府機関の移転や移住促進の交付金、企業の本社機能の地方移転に際しての減税措置などを打ち出してきたが、十分な効果を挙げていない。政府機関の移転も文化庁が京都に移ったくらいで、ほとんど進んでいない。移転は防災や緊急時対策の面からも必要だ。是正に向け、もっと大胆な施策を打ち出すべきだ。

岸田文雄首相は「次元の異なる少子化対策」を掲げた。しかしその内実は児童手当の増額などが中心で、予算規模の大きさに比して実効性の不透明な「子育て対策」にすぎない。いま日本に必要なのはもっと根本的な「人口政策」である。

人口の多い都市部がブラックホールと化している現状を改善するのは容易ではない。都市型のライフスタイルは個人主義的になる。少子化対策の成果を挙げるには、強力な結婚・出産・子育て支援策が必要だ。

14年に県内市町村の8割以上が「消滅可能性」とされた島根県は、今回は12市町村が脱却した。強い危機感を持ち、若い女性が地元に留(とど)まれるよう、住宅や子育てなどの手当を充実させた。このような成功例を参考に、地方に若い世代が留まり、都市部から移住者を呼び込めるよう、国はさらに強力な支援策を講じるべきである。

批判恐れず価値訴えよ

結婚願望を持つ若い人たちのため、雇用環境を整え子育て支援を充実させることは重要だ。それとともに、将来の経済的な不安が多少あったとしても、結婚して子供を産み家庭を営むことに価値があることを訴えるべきである。それは素晴らしさを伝えるもので、押し付けるものではない。政府が個人の人生選択に介入しようとしている、などというリベラル派からの的外れな批判を恐れる必要はない。

https://www.worldtimes.co.jp/opinion/editorial/20240427-180923/