裁判員裁判で初の「死刑求刑」
 実は取材する記者らの間でいま、「似ている点が少なくない」と囁かれているのが、09年に起きたストーカー殺人事件という。当時41歳の男が、都内の耳かき店に勤める21歳の女性に入れあげ、「入店拒否された」ことを機にストーカー化。最後は自宅に侵入し、Aさんと同居していた祖母をメッタ刺しにして殺害した。当時、事件を取材した民放キー局記者が語る。

「裁判員裁判で初めて『死刑』が求刑された事件でしたが、すでに10年11月、東京地裁で無期懲役刑が確定しています。男の名前は林貢二といい、専門学校を卒業後に配電設備設計会社に就職し、真面目な勤務態度で知られていました。実際、酒は飲まず、無趣味で独り身。結婚しなかったのは26歳で発症した膠原病(全身性エリテマトーデス)が理由だったと公判で話しました。ただ就職して以降、コツコツと貯金にだけは励み、20年間でその額は1000万円を超えていました」

 そんな堅物の林が、初めて店を訪れAさんと出会ったのは2008年。すぐに気に入り、通い詰めるようになったという。

「Aさんの“普通っぽい”ところが気に入ったといい、多い時で月に30~40回も通い、初来店から1年間で200万円以上を使うほどのノメリ込みようを見せた。そのため給与のほとんどをAさんの店に落とすことになり、生活のために大切な貯金を切り崩すこともあったそうです。林はAさんに『恋愛感情はなかった』と法廷で述べましたが、一方のAさんは店の同僚などに『一方的に予約を入れてくる』など徐々に当惑の色を深め、最終的に店側から出入り禁止に。しかし、それでも林はAさんを待ち伏せしたりして接触を試みますが、Aさんに相手にされず、好意が憎悪に転じた結果、凶行に及んだといいます」(同)

 今回の事件と相違点もあるが、犯人と被害者の年齢差、犯行の手口や感情のもつれ、背景にある多額の金銭の流れなど「共通項」も見出せる。“真面目な中年男”が「怪物化」した理由は何か――。悲劇を繰り返さないためにも、厳正なる処罰とともに、今後の捜査の行方に注目が集まる。

デイリー新潮編集部