実質1.1%増と21年8月に並ぶ伸び、市場予想0.9%減-名目4.5%増
共通事業所ベースの名目賃金は5.4%増、公表開始の16年以降で最高
物価の変動を反映させた6月の実質賃金は27カ月ぶりにプラスに転じた。今年の春闘の好調な結果を映して名目賃金の増加率が4%を超え、物価の伸びを上回った。金融政策の正常化を進める日本銀行の見方に沿った内容だ。

  厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比1.1%増と2022年3月以来初めて前年を上回った。伸び率は21年8月に並ぶ高さ。市場予想は0.9%減だった。名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は4.5%増と1997年1月以来の高水準。基本給に当たる所定内給与の改善傾向が続いているほか、賞与など特別給与の大幅増加が全体を押し上げた。

  エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けない共通事業所ベースでは、名目賃金が5.4%増と、同ベースでの公表を開始した2016年以降で最高となった。所定内給与は2.7%増で最高水準を維持した。

  日銀の植田和男総裁は追加利上げを決めた7月の金融政策決定会合後の会見で、賃金上昇の強さに言及。春闘の結果が着実に反映され、大企業のみならず「幅広い地域・業種・企業規模で賃上げの動きに広がりが見られている」と説明した。次の利上げのタイミングを模索する日銀にとって、実質賃金のプラスの持続がカギを握ることになる。

  ブルームバーグが7月会合直後に実施した緊急調査によると、回答した41人のエコノミストのうち68%が、年内に政策金利を0.25%程度からさらに引き上げると見込んでいる。最多は12月の44%で、次いで10月が24%。次回9月との回答はなかった。

  今年の春闘の平均賃上げ率は5.10%と33年ぶり高水準を実現した。実質賃金の算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3.3%上昇と前月から横ばいだった。

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