社会における近代科学というものは
①[工学]職人芸による測定技術向上(レンズと望遠鏡発明)
②[科学]長年の地道な測定と仮説立案・検証
③[科学]複数の人々による仮説再検証
④[社会と科学の関係]確からしいと検証された仮説の社会的受容
という複数の段階からなる

そしてこの物語の背景15世紀は③と④の時代だけど
この物語の主題は[科学]ではなくて[科学と社会の関係]を描いた作品と言える

地動説を捨てた元司祭が異端審問官となり弾圧する描写は
・近代の理念である「科学的実証に基づく合理性」と
・中世の支配的原理である「宗教を振りかざす権力闘争」
の対立をカリチュアライスしたキャラクターに過ぎないね

そして最終的に[宗教]との権力闘争に勝利した
[科学]周辺に巣食う「ペンを武器とした新たな権力者」は
16世紀の司祭ガリレオ・ガリレイに対する宗教的権力闘争としての異端審問を、
旧勢力[宗教]の新勢力[科学]に対する傲慢さの象徴として
15世紀以前にも敷衍して、この物語のフェイクである
「科学に対する異端審問」が長年続いたかのような
錯覚を広めようとする。

この物語の視点は、
[宗教]の側にも[科学]の側にも
権力闘争のために虚偽を広めるどうしようもない輩が居て
それは20世紀後半の「科学万能信仰」の傲慢さとその本質的欠陥である「科学と社会の関係性」の脆弱さ
(科学の内側では再検証による追認で合意形成するが
 社会的視点の不足が原因で、
 社会的受容のフェースで大きな虚偽が起きる)
という大きな構図を俯瞰する作品のような気がす