>>266 これ橘玲のコラムが近いと思う
兵庫県知事選は劇場型”推し活” 週刊プレイボーイ連載(625)
この「対抗言説」に信憑性を与えたのが、「ゆかたまつり」や「ワインのおねだり」のような「ファクト」のかけらです。「ファックトチェック」が大好きなメディアは、こうしたファクトを検証するのではなく、県の職員の4割が知事のパワハラを見聞きしたことがあるという伝聞のアンケート結果を繰り返すだけでした。
事実と伝聞を並べれば、事実の方が説得力があるのは当然です。選挙期間中も、前知事を応援するひとたちは、さまざまな事実(とされるもの)をSNSなどで拡散し、「メディアの報道はすべてデマ」と主張しました。
こうして前知事は、「罠にはめられ、すべてを失った政治家」という別のキャラへと変身しました。興味深いのは、前知事自身がSNSでなにが起きているのかをよく理解できておらず、その“無垢”な姿がより同情を誘ったことです。
前知事の選挙事務所前では、当選が決まると、見ず知らずの支援者たちが互いに抱き合い、涙を流して喜び合ったそうです。兵庫県知事選は、「どん底に落ちたヒーローを自分たちのちからでもういちど輝かせる」という、劇場型の“推し活”だったのです。
『週刊プレイボーイ』2024年12月2日発売号