https://news.yahoo.co.jp/articles/75ba627329d7f657c0f7bebb371076a5f546bd53

「デジタル窓」に世界の風景動画…店舗や病院が設置を進める理由とは

デジタル技術を活用し、どこでも世界中の風景を楽しめる窓型液晶ディスプレー「デジタル窓」が人気だ。臨場感もあり、都市部のマンションや店、病院などの屋内空間で活用が広がる。

埼玉県に住むシステムエンジニアの男性(34)は、住宅街に立つマンション2階で妻と暮らす。自宅で仕事をすることも多いが、2か所ある窓の間近に別のマンションや住宅が立っている。「眺望がなくカーテンも開けづらい。息苦しかった」と話す。

そこで男性は、窓のような形をした縦長の液晶画面「デジタル窓」(縦約65センチ、横約40センチ)を活用している。デジタル窓は、インターネットに接続し、リモコンやアプリの操作で世界中の自然や街並みなどの風景映像を映し出すもの。内蔵スピーカーから撮影時の自然音なども流れる。

男性はリビングと書斎の壁面に計5台設置。購入費は計約30万円だった。スイスの名峰と滝の絶景、雨のイスタンブール、富士山と本栖湖を望むキャンプ場――。世界中の景色を自由に切り替えて眺めながら妻と夕食を楽しんだり、仕事や読書をしたりしている。「よい気分転換になるし、妻との会話も弾みます」

ラドルでは、デジタル窓でたき火などの映像を見ながら過ごせる(東京都品川区で)

男性が利用しているのは、デジタル窓メーカー、アトモフ(京都)が開発した「アトモフウィンドウ Yo/2」だ。月額980円〜のサブスクリプション(定額制)契約を結ぶと、世界52か国の1800以上の高画質な風景動画が見放題になる。

同社によると、昨年の売り上げは5年前比で倍増。眺望を求める都市部の住民のほか、オフィスやホテル、店舗などでも利用が広がっているという。

東京都品川区のサウナ施設、ラドルは2022年10月、個室6部屋内の壁にアトモフのデジタル窓を導入した。サウナを済ませた後、たき火やビーチなど好みの動画を見ながら休むことができ、「外気浴の気分を味わえる」などと好評という。

治療待つ患者の不安、緊張を緩和
患者の不安軽減に役立てているのが、神奈川県鎌倉市の大船中央病院だ。昨年5月以降、デジタル窓メーカー、ランドスキップ(北海道)の「メディカル ウィンドウ」を放射線治療室の天井や待合室の壁などに計25台設置した。

医療機関向けに開発されたもので、自然の風景や空、水中など、癒やしになる動画のほか、院内情報なども映し出すことができる。同病院の奥洋平さんは「病院内の無機質な空間で治療を待つ患者の不安や緊張を和らげたい」と話す。

家電評論家の鴻池賢三さんによると、デジタル窓は、技術開発などによる液晶パネルの大型化や低価格化を背景に、4、5年前から注目されるようになった。利用者らがSNSで、漫画「ドラえもん19巻(1980年初版)」に登場する、ひみつ道具「窓けしききりかえ機」のようだなどと話題にしていることも、関心を高める一因になっている。

鴻池さんは「デジタル窓は殺風景な室内を生き生きとさせ、気分転換やストレスの軽減につなげることができる。映像演出の楽しさもあり、今後さらに、商業施設や病院、介護施設などで利用が広がるだろう」と話している。
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