跡継ぎがいないなどの理由から、宗教法人が売買されるケースが各地で相次いでいる。売買は本来、法律で想定されていない脱法的な行為。買い手が宗教法人の税制優遇を悪用する恐れが指摘されるが、効果的な対策に乏しいのが現状だ。一方、法人の後継問題も深刻で、後任を探すためにやむなく売買の仲介サイトを利用するケースもみられる。
大阪府内の雑居ビルの窓ガラス。「宗教法人売買」と大書された紙が堂々と貼られていた。「買いたい人は節税、マネーロンダリング(資金洗浄)、利益を出しやすい納骨堂の経営の三つが目的」。6年前から宗教法人の売買を仲介する男性の業者(65)は、悪びれる様子もなく話す。
宗教法人が宗教活動で得た収益には課税されず、お布施などの収入も年間8千万円以内は収支計算書を作成しなくてもよい。宗教活動だと偽ってこの税制を利用すれば、脱税を図ることもできるという。2017年には、名古屋市の不動産会社社長が、自身が代表役員を務める宗教法人を介した不動産取引で法人税約1億円を免れたとして摘発された。