斎藤は失職後、11月の知事選で約111万票を得て再選を果たした。
百条委は3月4日、「県の対応は公益通報者保護法に違反している可能性が高い」などとする調査報告書を公表した。しかし斎藤は翌日、「一つの見解」「逆に言うと、適法の可能性もある」と発言し、受け入れなかった。
百条委はその強力な調査権限から、地方議会が首長を追及する「伝家の宝刀」とされる。首長が報告書を受け入れなければ、議会は問責決議や不信任決議を検討するのが一般的な流れだ。
しかし、県議会では「知事は昨年の知事選で民意を得た」として、再度の不信任決議に慎重な声が相次いだ。百条委の結論が出る前の不信任決議が、「宝刀」の切れ味を失わせた。
自民県連幹事長で県議の黒川治は3月22日の県連会合後、記者団に「もう勢いに任せて(知事を)追い込むことはない。同じ轍(てつ)は踏まない」と述べた。
第三者委は3月19日、県の対応の違法性を認定する調査報告書を公表した。しかし斎藤は3月26日、「対応は適切だった」とする従来の見解を変えず、自身が設置を決めた第三者委の結論も受け入れなかった。
第4会派「ひょうご県民連合」の迎山志保は記者団の取材に「馬耳東風、糠(ぬか)にクギ。きちんと受け止めないのであれば、議会としては不信任(決議)をするしかない」と踏み込んだ。
それでも、自民や維新、公明の幹部が不信任決議に言及することはなかった。
背景にはまたも、選挙に向けた思惑が絡む。今夏には参院選があり、自民、公明は兵庫選挙区で公認候補を決めている。両党の関係者は「知事が失職し、再び知事選が行われたら、参院選に影響する。それだけは避けたい」と口をそろえる。
ある県議は自嘲気味にこう話す。「『議会は政局ばかり』と見られても仕方がない。混乱が今も収まらない原因は、議会にもあると言っていい」(敬称略)