
人の手足にある角質を食べることで知られるドクターフィッシュを病気の研究に活用する―。
三重大ゼブラフィッシュ研究センター長の島田康人講師(薬理学)らの研究グループが、ドクターフィッシュの詳細なゲノム配列を世界で初めて解読した。
人の体温に近い温度で生きられる魚として、がんや感染症の研究に使う実験動物への活用が期待される。
研究グループによると、メダカやゼブラフィッシュなどの小型魚類は飼育が容易で、人と共通する体の構造を持つことから、動物実験に使われている。
一方で、人の体温に近い温度では長期間の生存ができず、研究には限界があった。
グループが注目したドクターフィッシュ(学名ガラ・ルファ)はゼブラフィッシュと同じコイ科で、体長最大約10センチの小型魚類。
40度ほどの水温でも成育できるため、人の体温を模倣した実験が可能になる。
研究グループはインドネシアのジャワ島で採集されたドクターフィッシュのゲノムを次世代シーケンス法で解読。
染色体数がゼブラフィッシュと同じ25対50本で、ゲノムサイズもほとんど変わらないことが分かった。
また、脳や肝臓、筋肉などの組織で発現している遺伝子を調査。
熱による影響で損傷したタンパク質を修復する「シャペロン」など、タンパク質をコードする遺伝子約98%の位置を特定した。
ウィーン大学(オーストリア)とインドネシアの研究機関との国際共同研究で、成果は九日に英科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・データ」に掲載された。
解読したゲノム配列はデータベースに公開され、世界中の研究者が自由に閲覧できるという。
島田講師は「ドクターフィッシュを実験動物として使う基盤ができた。がんや感染症の研究を進めていく」と説明。
「世界中の研究者がドクターフィッシュを実験動物として使うようになってほしい」と話した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/29ea42f4a37b6786d7a86f05ca84ab56873eabda