成長が見込まれる電気自動車(EV)市場に異業種が参入を目指す動きが活発になってきた。ソニーグループが4日、発売を含む事業化の本格検討を始めると表明。米国や中国でもIT(情報技術)企業による取り組みが目立つ。今後10年で800兆円規模に拡大するとされる一大市場は争奪戦の様相を呈してきたが、曲折を予想する声もある。

ソニーグループはEV事業に不可欠とみるセンサーやクラウドコンピューティング、高速通信規格「5G」などの技術を社内に抱え、エンターテインメントやコンテンツ資産も活用できる。物言う株主などから複合経営を批判されてきた経緯があり、EVを自社ならではの「総合力」を生かせる分野として有望視している可能性が高い。

ただ、事業化に向けた課題がある。ひとつは量産の壁だ。「試作品を作るのは比較的簡単だが、大規模な製造は非常に難しい。製造システムの設計は自動車そのものの設計より100倍困難だ」。EVで先行したテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はこう語り、何度も綱渡りを余儀なくされたことが明らかになっている。

採算性にも課題がある。中国の新興企業などが価格競争を仕掛けているほか、大手と新興、異業種の三つどもえの戦いのなか、利益を確保しづらくなる恐れがある。実際、ソニーグループと同じ家電事業を「祖業」とする英ダイソンは19年、準備を進めてきたEV事業への参入を断念した。

事業を成功に導くカギを握りそうなのは、多様なパートナー企業との連携だ。ソニーは20年に公開した試作車で自動車版EMSなどと呼ばれるオーストリアのマグナ・シュタイヤーなどから協力を得た。4日に公開した多目的スポーツ車(SUV)型の「VISION-S 02」も同社が製造を担ったようだ。

ソニー幹部は20年、「単独で事業化するよりも、既存大手などと提携するのが現実的。興味を持ってもらうために試作車を公表した」と話していた。製造などで実績を積んだメーカーとの連携も含め、事業を進めるための枠組みの構築が課題になる。既存企業は強力なライバルにもなり得る後続企業との間合いを問われることになる。

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