馬毛島の買収費上乗せを裏付け 共産入手の文書、政府側記録か
https://news.yahoo.co.jp/articles/f82399f3c2de3b54117cae4bd6171cc9f8aa9072
政府が米軍機訓練の移転に向けて自衛隊基地の建設計画を進める鹿児島県・馬毛島の買収額160億円について、
地権者による島の造成費用を上乗せしていたことを示す文書が明らかになった。
買収当時の政府と地権者側の交渉担当者は西日本新聞の取材に、ともに上乗せを認める証言をしており、
文書はこれを裏付ける。
地権者の造成は違法の恐れが指摘されていたが、政府は早期移転を強く求める米側の圧力に屈して、
巨額の予算支出を決めた疑いが強まっている。 (湯之前八州、片岡寛)
文書は、2019年12月6日の日付と「数量470万472・26平方メートル」
「価格45億8825万5656円」、価格の内訳とみられる
「購入費10億3642万9722円 敷地造成費35億5182万5934円」の記載がある。
島の買収状況を記録した政府側の文書とみられる。
日米両政府は11年、馬毛島を訓練移転の候補地とすることで合意。
政府は、島の大半を所有する東京の開発会社に売却を求めた。
同社は独自に建設した滑走路などの造成費用を含め、400億円での売買を主張。
政府は不動産鑑定などで45億円が適正とし、交渉は難航した。
さらに国の公害等調整委員会は16年、同社の造成は森林法違反が「推認される」と裁定した。
17年以降、米トランプ政権は、馬毛島への訓練の早期移転を再三要求。
対する安倍晋三政権は、官房長官だった菅義偉前首相の陣頭指揮で同社との交渉を加速させ、
19年11月に160億円で妥結した。ただ積算根拠は明らかにしてこなかった。
文書を入手したのは共産党の田村貴昭衆院議員だ。
8日の衆院予算委員会で「造成費を上乗せしたのではないか」と追及。
岸信夫防衛相は「資料の出所が明らかでなく答えは控える」と答弁を拒んだ。
160億円の積算根拠も「利害関係者間の調整がある」と引き続き公表しなかった。
安倍政権で交渉を担当した当時の官邸幹部は昨年5月、取材に対し
「政府の評価額に開発会社の『整地料』(造成費)を上乗せした」
「日米同盟を維持する観点から、是が非でも買収する必要があり、菅氏の鶴の一声で金額が決まった」と証言した。
同社側の交渉担当者も取材に「『整地料』名目で増額したとの説明を官邸側から聞いた」と打ち明けた。
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政府は、基地建設の前提となる環境影響評価(アセスメント)が終わっていないにもかかわらず、
22年度予算案に基地の本体工事費など3183億円を計上。
今年に入り島内の道路や港の整備に着工した。
岸氏は12日、鹿児島県庁を訪問。
「アセスで住民に判断材料を示すべきだ」と訴える塩田康一知事に、「安全保障環境は一刻の猶予もない」と応じ、
中国軍の日本周辺での活動状況を記した資料を提示。アセス終了前でも工事の入札などを進めると明言した。
「日米同盟」や「中国の脅威」の名の下に、法や地元の意向を軽視し、
安全保障を優先する政府の姿勢がますますあらわになっている。