「サッカーに対する価値観を、具体的に考えてみたんですけど……」

こう切り出した男子学生は、サッカーに強い抵抗感を抱く層として「野球一筋で生きてきた人たち」と仮説を立て、さらにこう続けて教室内の笑いやどよめきを誘った。

「サッカーは野球など他のスポーツと比べて点が決まりづらくて、それに対して90分ちょっとと試合時間が長めなので、何だろう……、“見る価値がない”としちゃうと言い過ぎなんですけど、あの、コスパが悪いというか……」

費用対効果を意味するコストパフォーマンスの観点でサッカーを捉える。ピッチ上で費やされる労力(コスト)に対して、得点という結果(パフォーマンス)が不釣り合いだとする斬新な発想に、中村さんのテンションも上がっていった。

「引退してから何となくは感じていましたけど、それがまざまざと、リアルに言語化されましたよね。確かに90分間で2、3点しか入らないし、0対0の試合もあるので言い得て妙というか、そういう人たちからすると(コスパがいいとは)見えないですよね。僕が今まで会ってきた人たちは全員がサッカーに興味がありました。でも、そうではない人たちがこれだけ大勢いるなかに入ったのは初めてだったし、今までに経験したことのない時間でしたけど、これが多分、日本の現実なんですよね」

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