「あなた、ゴルフに行く余裕なんてないわよ」
 5月分の家計簿を指し、眉をひそめながら妻が言う。それを覗き込んだ井上昭さん(66歳・仮名)は
驚愕した。毎月6万円だった食費が7万円を突破し、ほかの支出も前月より大幅に上がっていた。

 井上家のケースで詳しく見ていこう。収入は月約25万円で平均(23万6576円)より多い。
一方、月の支出は約28万円と、こちらも平均(25万5100円)を超える
 家計は毎月約3万円の赤字となるが、問題ないはずだった。「老後は2000万円が必要」と騒がれたが、
井上家にはそれを超える2200万円の貯蓄がある。
 家計の赤字は毎月約3万円なので、年間で36万円を貯蓄から取り崩す。
この先30年生きるとしても、生活費に充てる貯蓄は1080万円があれば問題ない。
介護への備えは「夫婦で1000万円」(ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏)くらいが目安というのが一般的だ。
 合計2080万円が必要になる試算なので、2200万円の貯金で十分対応できるはず―。

 ところが今、井上さんの人生設計は大きく狂い始めている
 「出費が顕著に増えているのは食費で、毎日食べるパンやハム、パスタの値上げが大きいです
妻が出かけている時はお弁当を買うのですが、約50円値上がりしました
 ガソリン代の上昇も響いています。リッター170円を超えてくると、気軽に遠出もできません。
トイレットペーパーや洗剤も高くなったと感じます」(井上さん)
 '22年に値上がりする商品は、食品と飲料だけでも1万789品目に上る(帝国データバンク調べ)。

https://news.yahoo.co.jp/articles/823b59db34243222d94e925653d4e940675e2266?page=1