スマホから距離をとりたいと願いながら、なかなか実現できない大人たちは大勢いる。そして、我が子をスマホから遠ざけたいと願う親たちも。だがいま、スマホやソーシャルメディアに疲れ、自らそれらと距離を置こうとする子供たちが現れ始めている。

日曜日、10代の若者たちが、ニューヨーク・ブルックリンの中央図書館の階段に集まった。彼らはソーシャルメディアやテクノロジーから解放されたライフスタイルを促進する高校生のグループ、「ラッダイト・クラブ」のメンバーたちだ。

プロスペクトパークへ向かう道中、彼らは自分のiPhoneをしまった。なかには、スマホでなくガラケーを持つメンバーもいる。彼らは丘を登り、公園の人混みから遠く離れた小山に向かう。

「雨でも晴れでも雪でも、私たちは毎週日曜日にここにいます。互いに連絡を取ることがないので、ここに来るしかないんです」。そう話すのは、高校3年生のオディール・ゼクスター・カイザーだ。

メンバーたちは丸太を集めて円形に並べ、その上に座った。その後は静かだった。スケッチブックに絵を描く者。目を閉じて風の音を聴く者。読書する者も多い。彼らが読んでいたのは、ドストエフスキーの『罪と罰』、漫画家アート・スピーゲルマンの『マウスII』、古代ローマの哲学者ボエティウスの『哲学の慰め』などだ。ハンター・S・トンプソンやジャック・ケルアックといった自由奔放な生活を送った作家も人気がある。

「私たちの多くが、『荒野へ』という本を読んでいます」と話すのは、高校4年生のローラ・シャブだ。『荒野へ』は、裕福な家に生まれた青年が、アラスカの荒野に一人足を踏み入れるというノンフィクションである。

「私たちは皆、建物の中や仕事にばかり囚われるべきではないという考えを持っています。この本の青年は、人生を生きていました。真の人生です。ソーシャルメディアとスマホは、真の人生ではありません」

彼女もガラケーを使っている。「ガラケーを手に入れて、すぐに変化がありました。自分の頭を使い始めたんです。自分自身を、一個人として観察するようになりました。自分で本も書き始めて、いまは12ページくらいです」

このクラブを創設した17歳のローガン・レーンは、新型コロナウイルスによるロックダウン中に、ソーシャルメディアとの関係に悩まされるようになったという。「完全にソーシャルメディアに依存していました。すべての投稿を見ていたんです」

彼女は次第に疲れ果ててしまい、インスタグラムにアップされる絵のように完璧なセルフィーを見ることができなくなった。その結果、彼女はアプリを削除した。「ですが、それだけでは足りませんでした。だから私はスマホを絶ったのです」

クラブの名にある「ラッダイト」とは、産業革命期、イギリスの織物工業地帯で機械化に反対した労働者たちのことを指す。また、それにちなんでテクノロジーを嫌う者たちを意味する。現在、同クラブには25人ほどが在籍し、複数の高校にメンバーがいる。その数は、少しずつだが増えつつある。

エドワード・R・マロー高校支部は、毎週火曜日に集まりを持つ。彼らはまだスマホを手放していない学生を歓迎し、まずは1時間ほどのミーティングの間、スマホを触らずに過ごすよう提案する。毎週日曜日には学校をまたいでプロスペクトパークで集まり、天気の良い日は読書用のハンモックを設置することも多い。

メンバーの一人で、プロスペクトパークではW・E・B・デュボイスによる『黒人のたましい』を読んでいたヴィー・ド・ラ・クルーズは言う。

「ソーシャルメディアに何か投稿しても、『いいね!』を充分にはもらえなくて、自分自身に満足できなくなります。そんなことは誰にも起こるべきではありません。このクラブにいることで、私たちはみな些細なことは心配しなくてもいい人生を生きていて、すべてうまくいくんだ、という気持ちになれるんです」

https://news.yahoo.co.jp/articles/7c48655087d6ee065ffd21b83a55f51d8f6120f0