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社員が休憩しないと「労働基準法に二重違反」、意外と知らない落とし穴
働き方改革など、大きく変化しつつある労働環境ですが、新たに2023年4月1日から中小企業を対象として、時間外労働の賃金率が変更されるのをご存じでしょうか?そこで今回は労働環境の変化に企業がどのように対応すべきか、特定社会保険労務士の大槻智之さんの著書『働きやすさこそ最強の成長戦略である』(青春出版社)から抜粋紹介します。
いま、労働環境は大きく変わってきている
各企業の働き方改革の進み具合には、バラつきがあると思いますが、労務管理に真剣に取り組む雇用主は、以前と比較すれば格段に増加しています。労務知識がない、あるいはそもそも法律を守る意思のない経営者は、年々、減少傾向にあります。その一方で、労働者側の起こす訴訟は増えています。
たとえば、公立の学校教員に対する時間外労働の残業代支払いを求める訴訟は、教員側の請求は棄却されましたが、働き方改革に一石を投じる裁判となりました。ほかにも、郵便局員が制服に着替える時間を労働時間とし、賃金の支払いを求めて係争中の裁判もあります。こうした変化の背景には、労働関連の法律が改正されていることも理由にあると考えています。
2020年6月にハラスメント関連法が改正されてからは、従来、規定のなかったパワハラ防止法が新たに施行されました。2022年4月からは、中小企業においても社内のパワハラを防ぐために対策をすることが義務づけられました。
2022年4月から2023年4月まで段階的に、改正育児・介護休業法も施行されます。今回の改正は、男性や非正規労働者の育児休業の取得促進を主な目的にしています。
2022年10月と2024年10月には、500人以下の企業についても非正規労働者を対象とした社会保険適用の拡大も段階的に施行されます。
そして、2023年4月から、1カ月に60時間を超えて残業させた場合には、5割増し以上の賃金を支払うことが中小企業にも義務づけられます。このように多くの法律が成立していることは、それだけ労働環境が変化していることを意味しています。
意外と見落としがちな労働基準法の落とし穴
大きく変わりつつある労働環境ですが、こうした変化以外にも要注意な点は多いです。たとえば休憩時間なども見落とされがちなポイント。
よくある例で説明します。正午〜午後1時を休憩時間としている会社で、ある社員は午前中の仕事が終わらずに12時20分まで労働したとします。その社員は20分から休憩に入るので、本来なら1時20分まで休むべきです。ところが、上司が何も指示をしないと、いつもどおり午後1時から仕事を再開しようとします。このような場合、本人が休憩時間を短縮したことにより、法律で定められている休憩時間を会社が与えていない、ということが起こります。これを防ぐために、直属の上司が社員に対して、1時間の休憩をきちんととるように声をかけるべきです。
よく見ていないと、中には休憩を取らずに仕事を継続しようとする社員さえいます。特に注意が必要なケースは、タイムカードの管理上、1日の労働時間から自動的に休憩時間を引く設定にしている会社です。管理職が注意しておかないと、法律で定められている休憩時間を与えていないばかりか、結果として賃金未払いになってしまいます。
「休憩しないのは本人の自由なのでは?」と考える経営者がいますが、これは間違いです。会社は社員が働いた分の賃金を支払う義務があります。本人の行動を黙認せず、労基法に則った働き方をするように、必要に応じて管理職がコントロールしなくてはなりません。そうしないと、休憩を与えないばかりか賃金未払いになり、労基法に二重に違反することになります。だから、たかが休憩とあなどってはいけないのです。