「台湾有事」安倍元首相が示した覚悟=@政治家には国民を守る重い責任がある 国家安全保障局を設立

【山下裕貴 目覚めよ日本】

中国の台湾侵攻作戦は、その遂行の過程でさまざまな事象が発生し、困難な事態が生起する。侵攻目的の達成を左右する最大の作戦は、上陸に続く地上作戦であり、海上補給作戦である。この段階で中国軍は大きな試練に見舞われるだろう。

【地図】中国が南シナ海で進めている軍事拠点化

米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は、2026年に中国が台湾に侵攻するとのシミュレーションを24回実施し、「侵攻作戦は失敗する」と報告書を出している。

報告書では「侵攻は最初の数時間で台湾の海空軍の大半を破壊する攻撃から開始され、中国海軍は台湾を包囲し、数万の中国軍兵士が海峡を渡る。

しかし、開戦と同時に米軍が介入し、台湾地上軍は上陸拠点の中国軍を急襲し、日本の自衛隊の支援を受けた米海軍が中国軍の上陸船団を撃沈し、ほぼすべてのシナリオで中国軍の侵攻は失敗する」と予測している。

この報告書には「政治的な意味」が込められていると考えたほうがよい。それは中国に対して、「どのような形であれ米国は軍事介入し、その結果中国軍の台湾侵攻はすべて失敗する。だから冒険はするな」とのメッセージを発する役割を担っている。

同時に、台湾に対して、「ウクライナ国民のように最後まで戦い抜け」と、日本に対しては、「犠牲をいとわずに米国とともに戦い、台湾海峡の平和を維持せよ」と伝えている。

戦線が膠着(こうちゃく)状態となり、侵攻した中国軍が海上補給を断たれ、撤退か降伏かの決断を強いられる状況に追い込まれれば、中国の習近平国家主席は「核の使用」を決断するだろう。それは台湾侵攻作戦に彼の政治生命がかかっており、失敗は許されないからである。最悪の場合には米中の核戦争にまで発展してしまう可能性がある。

私は以前、自衛隊高級幹部会同のレセプションの席上、安倍晋三首相(当時)に次のように質問した。

「総理の設立された国家安全保障局が、有事の司令塔として役立ちますね」

安倍首相は静かにこう答えられた。

「組織をつくっても使いこなせるかは政治家次第だ。その時の総理がいかに使うかだ。政治家の責任は重い」

「日本有事(台湾有事)」に、国民の生命と財産を守るために、いま何をしなければならないのか。防衛力を抜本的に強化し、抑止力を高めるとともに、政府は事態の推移を的確に読み取り、適切な状況判断に基づいて国民保護や防衛作戦の準備および、防衛作戦を行わなければならない。

もちろん有事が発生しないように、外交努力を最大限に行うことは論をまたない。

戦争には勝者も敗者も存在せず、あるのは荒廃した国土と多くの人々の犠牲と悲しみである。
https://news.yahoo.co.jp/articles/70536ec667e1c0bd8e06a732c645b909615c987e