実質賃金が30年間上がらないのはなぜ?元日銀副総裁がわかりやすく解説

―[経済オンチの治し方]―
私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。
そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。
そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

◆実質賃金が、30年間上がらないのはなぜ?
実質賃金とは、給与(賞与含む)から物価変動の影響を差し引いた「一人当たりの実質賃金」を指し、
厚生労働省の毎月勤労統計調査」(以下、毎勤)の「実質賃金」を用いるのが一般的です。
その値は1996年をピークに、ほぼ一貫して下がり続け、’21年は1990年比で10%も低い水準にあります。
そのため、メディアは「アベノミクスは失敗だった」と繰り返し報じてきました。
しかし、この実質賃金は必ずしも正確に雇用情勢を反映しているとは言えません。正規社員と非正規社員を一緒くたにしているためです。
アベノミクス期間(’13年~’21年)に失業率は4%台から2%前半まで下がりましたが、このように雇用環境が改善されていく局面では、
実質賃金が下がる傾向にあります。既存の雇用者よりも賃金の低い、非正規も含めた新規の雇用者が増えるためです。
この点を、安倍晋三元首相は国会答弁で、「私の妻が働きに出て、その賃金と私の賃金を合計して2で割った一人当たり実質賃金は低下してしまいます」と話していました。
実質賃金が低迷を続けた原因は、一人当たり労働時間の減少にあります。
OECD(経済協力開発機構)の統計を見ると、1990~’21年の日本の労働生産性上昇率は、G7中2位の高さでした。
ところが、この期間の一人当たり労働時間は毎年0.75%ずつ減少しました。
この減少率は米国の10倍、英国の3倍という、すさまじさです。
生産性は大きく向上したにもかかわらず、労働時間が大幅に減ってしまったため、
実質賃金上昇率はG7中、6位に落ち込んでしまったのです。
このように労働時間が減少した背景には長期にわたるデフレがありました。
雇用環境が悪化し、労働時間が短い非正規社員の比率(’02年29%→’22年37%)が上昇したのです。
より正確に賃金動向を見るため、今回はGDP統計の「雇用者報酬」も見ておきましょう。
この統計の雇用者報酬は、賃金・俸給に企業の社会負担(年金保険料負担など)を加えた金額になります。
企業の社会負担は「毎勤」の賃金には含まれませんが、企業の社会負担は雇用者に帰属する所得であるため、雇用者報酬には含まれています。
消費増税の影響を除去した消費者物価を用いて計算すると、’12年の一人当たり実質雇用者報酬は
対1997年(デフレが始まる前年)比で8.9%のマイナスになります。
一方で、’21年の実質雇用者報酬は対’12年比で3.9%のプラスです。
9年間で3.9%の上昇率は年平均にすると0.4%にすぎません。
そのため上昇を実感しにくかったのは事実でしょうが、雇用者報酬で見ると、30年間低迷し続けたわけではなく、
「アベノミクスが始まってからは少しずつ上昇し続けた」のです。

◆岩田の“異次元”処方せん
生産性向上の半面、労働時間が大幅に減ったためです

―[経済オンチの治し方]―

【岩田規久男・元日銀副総裁】
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。
上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。
’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。
経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

https://news.yahoo.co.jp/articles/78d83b11218f5fd3c8295c156bd4ba0305e2f6cb


しかしヤフコメでもバチボコに反論され論破されてしまう
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