ロシア軍が発電所を一斉攻撃、ウクライナのエネルギー企業「発電能力の半分が失われた」

ロシア軍がウクライナの火力・水力発電所を標的に大規模な攻撃を繰り返し、電力不足の懸念が広がっている。ウクライナ最大の民間エネルギー企業DTEKは29日、一連の攻撃で「発電能力の半分が失われた」と明らかにした。ウクライナ側は防空システムを強化する支援を米欧に繰り返し求めている。
ウクライナ南部ドニプロペトロウシク州はロシアから激しいミサイル攻撃を受けた(29日)=ロイター

 ウクライナ軍によると、露軍は29日未明、ウクライナ東部ドニプロペトロウシク州や西部リビウ州など6州のエネルギー関連施設を一斉攻撃した。ミサイルは39発中26発、無人機は60機中58機を撃墜したが、発電所などが被害を受けた。

 DTEKは火力発電所3か所で深刻な被害が出たと発表し、「攻撃がより正確で集中的になっている」と指摘した。DTEK幹部は防空能力強化に向けた支援を米欧各国に訴えた。

 米国家安全保障会議(NSC)の報道官は29日、ウクライナ侵略開始以降で最大級のエネルギー網に対する露軍の攻撃だとする声明を発表し、「ウクライナ国民を暗闇に陥れようとしている」と非難した。

 露軍は22日にもウクライナ各地のエネルギー関連施設に大規模攻撃を行ったばかりだった。国営電力会社ウクルエネルゴはドニプロペトロウシクなど6州で計画停電を行うと発表した。

 ウクライナもロシアの石油精製施設への攻撃を繰り返している。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日付の米紙ワシントン・ポストのインタビューで、石油施設攻撃について「米国の反応は肯定的ではなかった」と明らかにした。米国は原油価格上昇を懸念し、攻撃に否定的だったとされる。ゼレンスキー氏は「我々は自分たちの無人機を使った。誰も『使えない』とは言えない」と述べ、攻撃は正当な権利だと主張した。

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