AMDの主力製品であるRyzenシリーズやRadeonなどはTSMCで製造がされていますが、どうやらAMDでは2023年に登場予定の3nmプロセス採用製品ではサムスン電子の3nmプロセスの採用が検討されているようです。

サムスン電子では、3nmプロセスの製造を2022年前半から開始する事が計画されていますが、台湾のDigitimesによると、サムスン電子製3nmプロセスに対してAMDが興味を示していると報じられています。

2021年、AMDではサーバー、データセンターなどエンタープライズ向け製品で大きな伸びを記録し、調査会社によると前年比で営業利益が65%という脅威的な伸びを記録したとのことです。この伸び率は半導体系企業として25位中1位でNVIDIAの54%やAppleの17%を大きく超える値となっています。

このAMDの好調を支えるのはTSMCによる最新かつ安定したプロセスでの製造請負で、RyzenシリーズではIntelよりも微細化された7nmプロセスを採用することで高い歩留りとコストパフォーマンスそして、優れたパフォーマンスで圧倒していました。

しかし、AMDでは2019年から発売されたZen2から2021年に至るまで7nmプロセスを採用するなど進化のスピードが遅くなりはじめ、5nmプロセスに関しては2022年下旬に登場するZen4やRadeon RX 7000シリーズまで採用されないと見られています。このペースダウンに関してTSMCの製造キャパシティーの割り当てが関係している可能性がありそうです。

TSMCではAMDの他に、AppleやQualcommが設計するチップの製造請負をしていますがTSMCにとって最大の顧客はAppleのチップでiPhone、iPad、MacなどAppleが販売する数千万台の製品にはTSMCのチップが採用されています。そのため、近年TSMCはAppleに対して優遇を行っており、半導体需要の高まりを受けてTSMCが半導体価格を値上げする事を決めた際に、AMDなどには20%程度値上げを通知したのに対して、Appleには3%程度の値上げ幅に留めていました。

また、製造キャパシティーの割り当てに関してもApple優先のようで、2021年の5nm生産枠の80%はAppleが抑えており、2022年内に予定されている3nm生産枠に関してもAppleが大部分を抑えたとの話が出ています。

このような動きに対してAMDは不満と経営上のリスクとして認識を持っているようで、台湾のDigitimeによるとTSMCが常にApple最優先の動きであることから半導体の製造請負である程度実績があるサムスン電子に対して接触を図っている可能性があるとの事。そして、2022年上半期からサムスン電子が稼働を開始する3nmプロセスにおいてはAMDが最初の顧客になる可能性があるとの事です。

ちなみに、AMDではサムスンとの製造請負との話以前に、サムスン電子が独自に開発しているモバイル向けプロセッサであるExynos SoCについてAMDと共同開発が行われています。このExynos SoCにはRDNA2ベースのGPUが搭載されるなどAMDとは良好かつ近い関係を最近は構築しており、その延長線上で3nmプロセスからはTSMCでは無くサムスン電子に製造請負を行う可能性は十分考えられると言えます。

TSMCでは研究開発や製造キャパシティーを拡大させるために対外支出が増大しており高い売上高を長期的に生み出すAppleの存在は無くてはならない存在となっています。ただ、あまりにもApple優遇を優先するあまりAMDとの関係にはヒビが入ってしまったようですが、TSMCとしてはAMDより大量のお金を生むAppleを優先するのは経営上仕方がない事だと考えられます。

個人的に、サムスン電子に関してはNVIDIAのRTX 3000シリーズで採用されている8nmプロセスの歩留まりが悪いという噂があったため、良いイメージが無かったのですが、最近はそのような噂は無く歩留りについては改善が行われているようです。3nmプロセスについても現時点では計画通り進捗しているようですので、何も起きなければ2023年に予定されているZen5 CPUではサムスン電子製の3nmを採用したダイが搭載されるかもしれません。

https://gazlog.com/entry/amd-zen5-samsung/