岸田氏の屋台骨、開成高校にあり

2021/11/22 10:30

https://www.yomiuri.co.jp/column/wideangle/20211122-OYT8T50005/

駆け出しの頃、先輩記者に教えられた。
 「政治家を理解するには、精神的バックボーン(背骨、よりどころ)を知るのが一番だ」
 以来、政治家のバックボーンを探り続けてきた。戦争や労働闘争の経験、あるいは地元の里山風景など、人それぞれだった。
 岸田文雄首相の場合は「開成高校」ではないか。
そう思ったのは、岸田氏の近著「岸田ビジョン 分断から協調へ」(講談社)を読んだからだ。内容は政治理念や政策論が柱だが、興味深かったのは、自らの歩みを振り返った「人間・岸田文雄」の章だ。
 開成では初心者ながら野球部に入部。「野球に明け暮れた3年間」を過ごし、野球から多くのことを学んだ。後輩のためにバッティングピッチャーを買って出るなど「チームプレーの大切さ」も肝に銘じた。
 開成は東大合格者数日本一の進学校だ。ところが、東大受験に3年連続で失敗、大きな挫折も味わった。
 世襲議員で若い頃から「宏池会(所属派閥)のプリンス」と言われた人だが、意外に感じた。
 「この本を読んで、少しでも私という人間に関心を持ってもらえれば」と岸田氏は言う。



 政治家にとって高校とは何か。岸田氏の派閥の先輩である加藤紘一・元自民党幹事長に「政治家になるにはどんな条件が必要か」と聞いたことがある。
 「体が丈夫で、付き合いがよいこと。明るくて、40歳以下。そして地元の高校を卒業していることかな」
 政治家になるには「地盤、看板、カバン(資金力)」が必要とされてきた。それが衆院への小選挙区制導入(1996年)で、よりキメの細かい人脈が必要となり、「地元の高校を卒業していることも条件に加わった」というわけだ。