東京・京王線の幡ヶ谷駅から徒歩3分の好立地に、そのマンションはある。古びてはいるが南欧風の造りはオシャレと言えなくもない。
名前は「秀和幡ヶ谷レジデンス」。
1974年に建てられた戸数300の分譲マンションだ。
ただ、異様なのは周りに有刺鉄線が張り巡らされ、複数の監視カメラが来訪者を睨んでいることだ。
「あそこは他のマンションと違ってさまざまな制約があるんです。だから、事情を説明すると契約が白紙になることが少なくありません」
とは、同じ渋谷区内の不動産業者。
例をあげると、外国人や同性愛のカップルは入居不可。
音楽関係者もNGだ。
土日祝と平日午後5時以降はヘルパーであっても業者の立ち入り禁止。
土日の引っ越しも難しい。
ウーバーイーツなどの受け取りは1階ロビーでのみ。
洗濯物をベランダに干すなどもってのほか。
また、玄関のチャイムをインターフォンに交換するときは管理組合指定の1種類だけ。
風呂も決められたバランス釜以外は不可でユニットバスに交換しようものなら撤去を要求される。
聞いているだけで窮屈になってくるが、これらの謎ルールはほんの一部。ネットには、〈渋谷の北朝鮮〉などと書かれる始末である。
こんな変なマンションになった原因と指摘されているのが、管理組合の存在だ。
「組合の理事(6人)が20年以上実権を握り、自分たちに都合の良いルールを住民に押し付けてきた。それを破ったら管理人がすっ飛んできて責め立てるわけです」(住民の一人)
それもあってか、値段もパッとしない。不動産サイトを見ると約40平方メートルで1700万円。
「古さを考慮しても、この立地なら普通2千万〜2300万円はするはずですが……」(不動産コンサルタントの森島義博氏)
だが、異変が起きたのは11月6日のこと。
組合の総会が開かれ、前理事会に反発する住民らで構成された「秀和幡ヶ谷レジデンスを救う有志の会」に推された新理事が役員の過半を占めたのだ。
「新しい理事はルールの緩和を掲げています。これで本来の値段に戻るかもしれません」(前出の住民)