還付金を返すための個人番号だと、言われるがままATMに打ち込んだ数字は、詐欺犯の口座に振り込む金額だった――。
「還付金の詐欺は知っていたのに、相手を信じ切ってしまった」。150万円をだまし取られた女性が語った、その巧妙な手口とは。

島根県出雲市に住む60代の女性の家に、市役所の職員をかたる男から電話があったのは今月1日だった。
「2万4300円の介護保険料の払い戻しがあります。書類を送りましたが、あなただけ手続きができていません」
「自分だけ」「手続きは今日まで」と言われ、女性は慌てた。書類が届いた記憶はなかったが「うっかり捨てたのかもしれない」と思った。
電話の男が女性をはっきり名指しで呼んだことも、市役所の職員だと信じる要因になった。
払い戻しを受けるために金融機関へ行くように言われ、女性は到着後に携帯電話で電話をかけ直した。
するとATMに行くように指示され、女性は通話しながら、男に指示された通りに画面のボタンを押した。
「今どんな画面が出ていますか。そのボタンを押して下さい」
「あなたの番号は499243です」
市役所が割り振った個人番号だと言われ、打ち込んだ数字は、実は自分の口座から詐欺グループの口座へ振り込む金額。女性は49万9243円を送金していた。

「キャッシュカードの磁気が切れていて手続きができていません。他の口座のカードはありませんか」 
最初の振り込みをさせてしまうと、男は女性を別の金融機関へ誘導し、再び同じ操作をさせた。
結局、2カ所で計3回、合わせて約150万円を振り込んだ。同行し、途中から不審に思い始めた夫が駐在所に相談し発覚した。

「明るくて丁寧な態度で、詐欺を全く疑わなかった」と女性は振り返る。
「ひとごとだと思っていた。どうしてこんなことになってしまったのか、ショックで」と自分を責めたが、他の人の被害を防ぎたいと、会見で体験を話すことにしたという
https://www.asahi.com/articles/ASPCV6QNBPCHPTIB001.html