誰がパンに焼きそばを挟むのか “ポストベトナム”が強まる理由

東京パン連盟工業協同組合(東京都墨田区)は、これまで1000人を超えるパン製造の実習生を受け入れてきたが、その約8割はフィリピンの実習生だ。残りはインドネシアの実習生で、これまで1人の失踪者も出したことはない。最大の実習生供給国であるベトナム人の受け入れをしない理由を、同組合の原田一臣代表理事はこう話す。
「ベトナムのように多額の借金を背負わせ、来日させる仕組みは理解できない。実習生が目に見えないところで、日本のあらゆる産業を支えている。フィリピンのように、海外労働者に負担を与えない受け入れ方があるべき姿だ」
10月、同組合の実習生が働く北関東のパン工場を訪ねた。同工場は主にコンビニやスーパーで販売する総菜パンを製造し、約140人の実習生が働いている。
製造ラインにパンが流れ、そこに焼きそばやコロッケ、ハムカツなどの総菜を詰めていく。総菜を調理するのも実習生の仕事だ。種類が多く、機械化には限界があると、工場の担当者は話す。
「(日本人の)進学率の上昇とともに高校新卒者が採用できなくなり、有料の求人誌にアルバイト募集の広告を出しても、年に1人か2人の応募があるかどうか。実習生なしには工場を稼働できません」
敷地内に社員寮を準備し、その居住費や生活費を差し引いても、残業時間により差はあるが、実習生の手取りは12〜19万円程度になるという。
現在、ベトナムの実習生の数が上回るが、本音はフィリピン人の実習生に一本化したいと工場の担当者は話す。
「技能実習の3年間が終わり、フィリピン人の8割は続けて働きたいと言ってくれるが、ベトナム人は2割。インドネシアも検討しましたが、食品衛生上、食事は工場内の食堂になります。インドネシアは宗教上の理由で食べられないものもあり、実習生に合わせて食堂の運営を変えることは難しい」

https://www.premiumcyzo.com/modules/member/2021/11/post_10396/index_3.php