性的行為を目的に子どもを手なずける「グルーミング」の手口とは。被害者が刑法改正に望むこと
専門家は、子どもに「自衛」を押し付けていては被害を防げないとして、グルーミングの手法が広く知られることが重要と話します。

知佳(ちか、仮名)が中学に上がると、毎日のように通っていた習いごとの場で、
若手コーチから無視や体型をやゆされるなどのいじめに遭うようになった。
「このまま続けてもプロは望めない」という諦めも重なり、中学2年の途中でやめた。
共通の趣味を持つ友達はクラスにいない。父は仕事に、母は認知症の祖父母の介護にかかりきりだった。

漠然とした孤独の中で過ごす日々。知佳はネットの世界に没頭するようになった。
ありのままの自分を肯定し、受け止めてくれたのは10歳近く年上の塾の男性講師だった。

「全面的に信頼できるお兄さん」。そう思っていた。

それから数回、同級生と一緒に講師の自宅に行っては、勉強を教わったり、相談に乗ってもらったりした。楽しく、安らげる時間だった。
ある日、いつものように講師宅を訪れた。その日は知佳の他に誰も来なかった。
勉強をしていると突然体を触られ、キスされた。知佳は頭が真っ白になり、動けなくなった。

「大丈夫、大丈夫」「好きだからこういうことするんだよ」

講師はなだめるように言った。知佳は突然の事態に混乱し、何も言えなかった。
性行為の後、知佳は恐怖と不安に襲われた。「付き合うということなんですか」と尋ねると、講師は「そういうことだよ」と答えた。
「大人と対等に話ができて、他の生徒とは違う。君はすごく特別なんだよ」

これは恋愛なんだ。交際しているから、性的なことをするのは「普通」なんだ。
知佳は自分にそう言い聞かせた。

講師と性的な関係を持ってから間もなく、知佳は眠れなくなり、朝学校に行こうとするとパニックで発作を起こすようになった。
心療内科に通うようになり、抗うつ剤などを服用しながらなんとか登校した。

講師とデートに出かけることはほとんどない。会う時は自宅やカラオケボックスなどの密室に呼び出され、
毎回のように性行為の求めに応じた。
関係は、講師が転居するまで数年間続いた。」
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_619f3793e4b044a1cc114845