小学生で学習塾起業

  三重県鈴鹿市の中学1年生、浜口祐衣さん(13)は、小学5年生だった昨年の3月に学習塾「こどもLabo」を開業し「小学生起業家」として話題を集めました。
学習塾を起業したきっかけや途中 、コロナ禍にも見舞われたこの1年9か月の活動について、オンラインで取材しました。

 「高校生になってアルバイトするなら何がしたい?」。 最初のきっかけは浜口さんが友達と交わしたそんな会話でした。
「どうせなら、人に雇われる仕事より、自分がしたいことをしたい」と考えた浜口さん。
ネイル教室を経営する母親の純さんにその話をすると、商工会議所が主催し、起業の仕方を教えてくれるセミナーへの参加を勧められました。
2019年の秋に大人に交じってセミナーを受け、「最初は興味本位だったけれど、 周りの大人は熱心に起業を考えている人ばかり。
熱意に圧倒されて、自分も早く起業しようと思った」と言います。

教えるのも好き
 学習塾にしたのは、資格もいらず、勉強するのも人に勉強を教えるのも好きだったからです。
突然の起業に友達は驚きましたが、純さんは「やりたいようにやってみれば」と認めてくれました。
そして、ネイル教室の託児スペースだった自宅の6畳間を使い開業しました。
「こどもLabo」の「Labo」は、研究室という意味で、子どもと一緒に研究するという意味を込めたそうです。

 事前の予想と違って特に大変だったのは、集客でした。
募集チラシを作ったほか、SNSを使って情報を発信したのは、塾に行くことを決める親が見てくれる宣伝方法が大切だと思ったからだそうです。
自分の世代の価値観にとらわれず、他の世代に分かってもらうにはどうしたらいいかという柔軟性が大切なのでしょう。
そうした広報戦略も効果を上げ、これまで約20人の生徒に教え、中には車で1時間かけて通ってくれる子もいます。

 授業料は1コマ1時間で1000円。生徒は小学1〜6年生を対象にしています。1時間のうち45分は勉強、残り15分は知育玩具で遊びながら学びます。
授業では、学校の宿題を解いたり、浜口さん自作の問題や百ます計算をしたりします。
「授業では分からないことを否定しないようにしたり、分かりやすい言葉で教えたりすることを意識している」と浜口さん。
塾に通う子どもたちの保護者から、「帰ってきたとき楽しかったと言っている」などの声が寄せられ、やりがいにつながったといいます。

 コロナ禍が深刻になったときには、対面授業を諦め、オンラインでの学習相談に切り替えたこともありました。
浜口さんが中学生になって忙しくなったため、開校日は減りましたが、今年も7、8月の夏休みに開校。今後も長期休みを利用して授業を行う予定です。

これは仕事
 こどもLaboの仕事はとても楽しいそうですが、浜口さんは「これは遊びではなく、仕事なのだという意識で対応することが大切です」とも話します。

 小学生で起業した浜口さんは、将来、広い意味での教育に携われたらとも考えているそうで、教えることの難しさを経験し、
「子どもの学習意欲について深く知るために心理学を学んでみたい」とも語ります。

 みなさんも浜口さんのようにチャレンジ精神と責任感をもって、興味のあることに挑戦してみてはどうでしょうか。

編集後記
 起業という言葉に、難しそう、大変そうといったネガティブなイメージばかり持っていました。
しかし、浜口さんに取材し、起業は思っている以上に身近なものだと気づかされました。
世の中には一見難しそうでも実は簡単だったりするものが案外、多いのかもしれません。
だからこそ、主体的に様々なことに挑戦して、たくさんの発見をしてみたいなと思いました。(水谷)

 ★企画者 水谷卓郎記者(高1)、塚原瑠奈記者(高1)、橋本奈帆記者(中1)、高庄愛優香記者(小6)

https://www.yomiuri.co.jp/teen/junior/jnews/20211118-OYT8T50037/