捨ててゆく私「わたしは悪くない」 by 茶屋ひろし|LOVE PIECE CLUB(ラブピースクラブ)
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私の勤めている本屋は梅田の地下街の端っこにあります。梅田だからか端っこだからか、たまにびっくりするような出会いが起こります。
店を開けて、午前中の品出しをしているときでした。表の通路のほうから、「あー、イケメンとセックスしたい!」と女性の大きな声が聞こえました。頭の中ですぐ文章に変換されたくらいその発音はクリアでした。
あの人かな、と棚の傍から覗き見て、スタッフと顔を見合わせました。
その日はそれだけだったのですが、ある夜、レジに入っていたら店に入ってきた女性に「おい、イケメン! 本見ていいか?」と2メートルくらい先から大きな声をかけられました。

キッ、とこちらをにらみつけている彼女が、こないだの朝の人だと一瞬でわかりました。返答に詰まり「ど、どうぞ」なんて言っていると、フン! といった感じで棚を物色し始めました。年齢は私と変わらないくらい4、50代、小柄な女性で、豊かな髪を一つにまとめ、全体的にざっくばらんな装いです。