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本誌・週刊ポストは五輪開催中の今年7月、競技場の建設費など大会経費と関連経費を合わせると、東京都民は「10万3929円」、
都民負担金額を除いた国民1人あたり(都民を含む)の五輪負担は「1万408円」になると報じた(8月13日号)。
巨額予算を動かす組織委員会はその後もとんでもない経費の無駄遣いをしていた。国立競技場で1万個用意した開会式用の弁当を約4000個廃棄したのをはじめ、
42の競技会場のうち20会場で約13万個の弁当を賞味期限が切れる前に廃棄していた。
組織委は9か所の競技会場にコロナ対策で用意した未使用のマスク約3万3000枚、医療用ガウン約3400枚、消毒液約380本を「保管場所がない」という理由で廃棄。
使い道のないアベノマスクは6億円を超える費用をかけて保管していることを考えると、あまりにチグハグだ。

誰も責任を取らない
 客が宿泊しないホテルにも巨額の費用が支払われた。組織委は会場周辺のホテル約4万6000室を仮予約したが、早い段階でコロナで国際競技団体の
スタッフやスポンサー関係の招待客の人数が減らされることが決まった。
にもかかわらず、予約をキャンセルせずに一部のホテルが空室だらけと報じられた。組織委は、「医療関係者等の新たに生じた宿泊需要に充てるなど、有効活用を図った」
と回答したが、不泊となった室数や費用総額は「契約内容に係る」という理由で答えなかった。

コロナ対策として外国人選手やスタッフの移動用に多くのタクシーを借り上げ契約したが、これも独自の配車アプリがうまく機能せず運転手は開店休業状態。
当然、費用は組織委が支払った。『東京五輪の大罪』(ちくま新書)の著者でノンフィクション作家の本間龍氏が語る。
組織委はいろんな官庁やら企業からの寄せ集め。どんな失敗をしても責任を問われないからモラルハザードが起きた。物資の確保について言えば、
ムダが出ても責任は問われないが、いざというときに足りないと言われるのがいやだから、多めに確保しておく。民間企業ならこんな杜撰な発注をすれば減給やクビになるが、
彼らは何の責任も問われず、元の職場に戻る」
赤字の理由は、無観客になったことだけではない。無観客になったのに、満席を想定した開催プランを適切に変えられなかったから巨額赤字を生んだことがわかる。

もうすぐこの五輪の赤字を誰が負担するかをめぐる政府(国)と東京都のバトルが始まる。
組織委員会の武藤敏郎・事務総長は最終的な大会の収支決算が出るのは「来年4月以降になる」としているが、
国と東京都、組織委員会の間で赤字分担を協議するために今年の年末頃には収支の大枠が示される見込みだ。
そこでは、「IOCとの契約では赤字は開催地の東京都が負担することになっている」という立場の堀内詔子・五輪相と、
「無観客は政府の要請。政府も分担すべき」という構えの小池百合子・東京都知事による負担の押し付け合いの大喧嘩になるのは目に見えている。
だが、国と都、どちらが出すにしても、最終的にはさらなる税金負担で穴埋めされることになる。
放漫な大会運営をした組織委員会に赤字を埋める資産などなく、来年6月に解散される予定だ。橋本聖子・会長や武藤事務総長以下の幹部たちは
放漫運営の責任を問われず、お役御免となって逃げることができる。
「国も都も組織委も、開催さえすれば最後は税金でなんとかなる、というモラルハザードでこういうことになった」(本間氏)

さらに、五輪施設はこの先も長く赤字を垂れ流し続け、国民負担は続く。東京五輪のために国立競技場をはじめ7つの恒久施設(競技場)が建設され、
総整備費は約2900億円にのぼったが、7競技場合わせるとこれから毎年約50億円もの維持運営費がかかる。
そのうち黒字が見込まれているのはバレーボール会場に使われた有明アリーナだけで、競泳会場の東京アクアティクスセンターの年間6億3800万円の赤字など、
5施設は赤字の見込みだ(国立競技場は未定)。
国民に大きな「負の遺産」を残した東京五輪、果たして開催する価値はあったのだろうか。

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