「軟骨には血液や神経が通っていないため、これまで適応や自己修復はできないと考えられていました」

そう語るのは、ブリティッシュコロンビア大学の博士研究員であるミカエラ・カーンだ。
彼女は「スポーツ・メディスン」誌に掲載されたランニングと軟骨に関する新たな総説論文の筆頭著者でもある。

だが、その説は間違っている。循環的に体重負荷のかかる活動、つまりウォーキングや──驚くなかれ──ランニングは、
膝関節の軟骨をスポンジのように圧迫することで、一歩ごとに老廃物を排出し、栄養と酸素を豊富に含んだ新鮮な関節液を取り込んでいるのだ。
軟骨は年齢とともに摩耗して破壊される不活性の衝撃吸収材ではなく、定期的に使うことで適応し成長する生きた組織なのだとカーンは説明する。

これによって、たとえば2010年に行われた小規模な研究で、
普段ランニングをしない人が10週間のランニング・プログラムに参加したところ、軟骨の強度と質を示すマーカーが1.9%改善されたことの説明もつく。
さらに、膝に最初の痛みの兆候を感じた際に別の運動に切り替えてしまうと逆効果になるかもしれない理由も、この新説で説明できる。

ブリティッシュ・コロンビア大学の理学療法士で関節炎の研究者でもあるジャッキー・ウィッタカーは、
「膝に問題が出始めると、関節のために善かれと思って、水泳やサイクリングのような衝撃の少ない運動に切り替える人が多いのですが、
実際にやっていることは軟骨を飢えさせているに等しいのです」と述べる。
https://courrier.jp/news/archives/270187/