WEB特集 “棺桶”と呼ばれたコックピット 真珠湾攻撃を“追体験”する | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211206/k10013376561000.html
「(敵弾の)光が自分に当たる!と思ったら、飛行機のそばでパッと分かれて通り過ぎる。気持ち悪い感覚です」
80年前の太平洋戦争開戦、真珠湾攻撃に参加した元搭乗員(103)は、あの日を鮮明に記憶している。
しかし近い将来、戦争体験者がゼロになる日は確実に来る。
そのとき、私たちはこの未曾有の体験をどう次世代につないでいくのか。
専門家の間では、新しいテクノロジーを駆使した「戦争体験」継承の模索も始まっている。
(NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争」取材班/ディレクター 秋山遼)
記憶の風化・揺らぐリアル どう戦争を伝えるか
「太平洋戦争に日本は勝利した」「真珠湾があるのは沖縄県」
戦争に関するある意識調査の結果で、そう答えた人が少なからずいたと聞いて私たちは驚くとともに危機感をもった。
太平洋戦争80年というタイミングで、新シリーズ「新・ドキュメント太平洋戦争」を立ち上げることになったのだが、最大の課題は、いかにして若い世代に、戦争を伝えるか。
政治・軍事におけるリーダーたちの判断や行動を検証することも重要だが、若い世代からはかなり“遠い”話のように思えた。
戦争の時代を、視聴者が自らを重ね合わせながら理解していく、そんなアプローチができないかと考えた。
例えば、激しい空襲を経験した家族。
母の背中に負われた子供の目から見た、焼夷弾が落下してくるときのその光景。
例えば、戦場の兵士が、秒速800mを超える銃弾を無数に浴びせられるときの感覚。
そうした「個人の視点」から戦争を追体験していけないだろうか。
真珠湾攻撃 兵士たちの“エゴドキュメント”
大きな手がかりとなったのは、個人が記した日記や手記「エゴドキュメント」
公的記録とは違って個人の感覚や感情をたどることができるため“追体験”に適した資料だった。
専門家の間でも当時の空気感を知るための重要な研究材料となっている。
そこで真珠湾攻撃に参加した搭乗員たちのエゴドキュメントを探した。
航空部隊は戦闘機・爆撃機・雷撃機の部隊に分かれており総勢770人。
そのほとんどが10代〜20代の若者だった。
真珠湾から“生還した”搭乗員たちが、戦場のリアルを書き記していた。
「搭乗員指揮所前に整列の号令がかかる。注意事項とともに『コウフンザイ』が渡された。愈々搭乗である」
「この日は、ハワイでは日曜日にあたり、なにも知らずに朝の散歩に出ていた老婦人が、われわれを米軍機とでも思ったのか、手を振っているのが見られた」
「敵砲火をくぐり、機体をひねるように反転、急降下に入った。後席で声がする。なんだろう。注意して聞くと、耳なれた節である。桐の小箱に錦着て…私たちがよく歌った白頭山節だった。かれは鼻歌を唄っているのだった」
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