なぜ、自民党は勝ち続けるのか。これは、現代日本政治最大の謎と言ってもよいだろう。筆者らのコンジョイント分析では、決定的な理由を十分に説明することはできない。しかし、2021年の調査では、そのヒントを得ることができた。

 その結果を示しているのが、図3の青色の点である。これも赤い点と同様に、争点ごとに各政党の政策が提示された場合の、政策パッケージを選択する確率を示している。ただし、青色の点は、図1で示されている内容とは少しだけ異なる実験をした結果である。
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 2021年の調査では、図1にあるような表から「政党1」あるいは「政党2」を何度も選んでもらう作業を各回答者に繰り返してもらった後、同じ回答者に、「政党1」と「政党2」の代わりに、「自民党」と、ランダム割り当てられたもう一つの政党(例:「立憲民主党」)を表示して、「どちらを支持しますか」という質問をしてみた。1回目の作業も、2回目の作業も、各回答者は全く同じ内容の(ランダムに生成された)2つの政策パッケージを繰り返し比較している。

 その結果、「自民党」の政策パッケージだと提示された場合、そのパッケージを選択する確率が跳ね上がることを、図3の青色の点は示している。しかも、パッケージの中に自民党以外の政党の政策が含まれていても、「自民党」というラベルがあれば、つまり政策パッケージを自民党が掲げていれば、そのパッケージを選ぶ確率が10ポイントほど増えるのである。

 例えば、外交・安全保障の共産党の政策は、「安保法制の廃止、軍縮へ転換、敵基地攻撃能力の保有に反対」というものである。赤い点が示すように、政党名が表示されない場合、この政策は明らかに支持されていない。しかし、共産党の安保・安全保障政策が含まれていても、パッケージに「自民党」というラベルがつくだけで、回答者は50%よりも有意に高い確率で選ぶのである。

 つまり自民党は、マニフェストで提案されている政策とは関係ない理由で、有権者の支持を得ているのである。それは、自民党だけが政策を実施できる能力を有しているという有権者の判断かもしれないし、自民党が長年培ってきた利益誘導政治が浸透しているからかもしれない。マニフェストで議論される争点とは関係なく、国庫補助金をより多く地元に配分してくれる、あるいは様々な規制を通じて雇用保障をしてくれるという、有権者の期待かもしれない。ただ単に、他の政党よりは「マシ」というイメージがあるからなのかもしれない。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/120200011/