ふとした時に聞いた。

――野球、好き?

「好きだよ」

――なぜ?

「バッターボックスが好きなんだ」

――キミはバッティングが好きなんだね。

「いや、僕は下手くそだからバットにボールが当たらない。でもバッターボックスが好きなんだ」

 そして12歳のガーナ人少年はこう続けた。

「Yes, Baseball is Democratic, that's why, l love it」

 野球は民主的なスポーツ。だから好きなのだと。

 なぜか。打席が必ず回ってくるからだ。

 その機会には応援してくれる人みんなの目が自分に集まる。相手チームも自分に注目してくれる。下手くそな自分に対しても「打球が飛んでくるかも」と投球ごとに姿勢を変えてくる。ヒーローになれる場所が、バッターボックス。

 それが嬉しい、と。

 サッカーと比べると、確かにそうだ。試合に出たって、ボールに触れるかどうかの保証はない。でも野球は、打順という機会が必ず与えられるのだ。

 友成自身、考えてもいない観点だった。

 アフリカでの野球の普及。この活動を続けていこう。そう誓った。後の赴任地タンザニア、南スーダンでも同じように子どもたちに教えていった。
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