“生乳” 大量廃棄の可能性 業界団体が危機感強める
2021年12月11日 17時17分
この年末年始、牛乳や乳製品の原料となる生乳がかつてない規模で余り、廃棄される可能性があることが、業界団体が行った試算で分かりました。コロナ禍で落ち込んだ業務用のバターなどの需要が回復しない中、学校給食が休みになることなどが背景にあり、廃棄を避けようと、団体は牛乳の消費拡大などに力を入れています。
在庫量が過去最高水準まで増加
乳業メーカーや酪農家でつくる業界団体の「Jミルク」によりますと、生乳の生産量は、6年ほど前のバター不足などを受けて増産に取り組んできた効果がここ数年あらわれているほか、ことしは夏場の気温が低く、乳が出やすかったということで、今年度の生産量は昨年度より17万トン余り多くなる見通しです。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大以降、業務用のバターや脱脂粉乳の需要が落ち込んでいて、在庫の量は過去最高の水準まで増えているということです。
そのうえ年末年始は、学校給食が無くなるなどして牛乳の消費量が大きく落ち込むことから、この年末年始には、団体の試算で、5000トンの生乳が廃棄される可能性があるということです。
15年前の2006年に、牛乳の消費の低迷からおよそ900トンの生乳が廃棄されたことがありますが、仮に、これだけの量が廃棄されることになれば、過去に例のない事態ということです。
廃棄を避けようと、団体では、酪農家に対し年末年始に出荷を抑制するよう協力を求め、出荷を抑えた酪農家には助成金を出すことを決めたほか、牛乳の消費拡大に向けてPR活動などに力を入れています。
略
牛乳の消費拡大につなげようと、JA全農は牛乳をたっぷり使った新商品を開発しました。
それが、ひと缶275グラムのうち国産の牛乳を50%以上使ったボトル缶入りのミルクティー。牛乳の「濃さ」は一般的なミルクティーの5倍ほどだといいます。
今月から販売を始めると、SNS上では、「絶対おいしい」「牛乳好きにはたまらん」などと反響があり、売れ行きは好調だということです。
すでに12万本を販売しましたが、牛乳の需要が落ち込む年末年始にはさらに12万本を製造する予定です。
ただ、JA全農によりますと、これだけの量のミルクティーをつくっても使用する牛乳は40トンほどで、根本的な解決にはつながりません。
この商品の販売のねらいは、直接的な消費だけでなく、今の窮状を知ってもらうことで牛乳の消費拡大につなげることにもあるといいます。
ボトル缶にプリントされたQRコードからアクセスすると、年末年始は牛乳の需要が落ちることや、処理できない生乳が出れば国産の牛乳や乳製品が手に入りづらくなる可能性があることが紹介されているほか、牛乳を使った料理のレシピも見ることができます。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211211/amp/k10013384611000.html