多数の患者さんと向き合っておられる東京都立松沢病院精神科部長の針間博彦先生にお話をうかがいました

統合失調症の「病識」とは

統合失調症の急性期では、幻覚や妄想に対して患者さんは病識、つまり「それが病気の症状である」という自覚を失っています。
たとえば、活発な幻聴が存在していても、本人はそれが実在していると思っているために「周りの人が言っている」とか「電波で頭の中に伝わってくる」などと考えます。

「誰もいないのに声が聞こえますか」などとチェックリストのままに質問しても、本人の感じ方にフィットしないため、
これだと症状を確認することはできません。

患者さんが訴える言葉を手掛かりにして、心の中でどんなことが起こっているのかを徐々に聞いていき、それが幻聴、つまり実在しない声が聞こえているという判断を客観的に行うという作業が必要になります。

本人は「周りの人から悪口を言われる」という日常的な言葉で説明をするので、その話を聞いた周囲の人は、最初は「本当に悪口を言われたのだ」と思うでしょう。

たとえば学校の先生がその話を聞いて「誰か悪口を言ったのか」と周囲の生徒を問いただしても、皆が「言っていません」と答えれば、「誰も悪口なんか言っていないと言っているぞ」と本人の訴えを否定して話が終わってしまいます。

その時に「これはもしかしたら病気の症状でそう感じているのかもしれない」という視点がなければ、本人の病状は見過ごされてしまうのです

https://medicalnote.jp/contents/151125-000032-WKDCBT