https://news.yahoo.co.jp/byline/ishiimasumi/20211228-00274410

【獣医師の告白】腹部を切り裂かれ地域猫6匹が死亡。この事件で知ってもらいたい「残酷な現実」

今年も残すところわずかになりました。

世の中では、コロナ禍でペットがブームになっています。そんななか、読むに堪えない猫の殺害事件の記事を目にしました。千葉県市川市大洲の江戸川河川敷で、「地域猫」6匹が腹部を鋭利な刃物で切り裂かれるなどして殺されていたのです。日本には、野生の猫はほとんどいません(日本ではイリオモテヤマネコとツシマヤマネコは野生の猫です)。

人間が作り出した地域猫がこんな無残な死を迎えることは、あってはならないことです。この事件から、野良猫や地域猫についてもう一度、考えてみましょう。

千葉県市川市 6匹の地域猫が腹部を切り裂かれて殺害
この残酷な記事を読んでみましょう。時事通信社によりますと、以下のように伝えています。

 近隣住民によると、現場はJR市川駅の南約1キロの河川敷遊歩道。付近に十数匹がすみ着き、周辺住民らが去勢手術の費用を捻出したり、餌やりしたりして、世話をしてきたという。

 今月5日朝、通行人が6匹の死骸を発見。いずれも腹を切り裂かれた状態で、うち4匹が箱の上に並べられ、壁に猫が打ち付けられたような痕跡も見つかった。2匹は河川敷に放置されていた。

つまり河川敷で6匹の猫が、いずれも刃物で腹を切り裂かれていて、そのうち4匹は箱の上に並べられていたといいます。猫が6匹も死んでいるだけでも異様なことですが、このように腹を切り裂いて殺害するという残虐なことはあってはならないことですね。

もちろん、野良猫や地域猫は動物愛護法の「愛護動物」にあたります。みだりに殺したり傷つけるたりすると愛護動物殺傷罪が成立します(最高刑は懲役5年、罰金だと500万円以下です)。

臨床獣医師から見て地域猫が狙われる危険性とは?
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
一般の人がこの記事を読むと外にいる猫なので、捕まえやすくて殺されたのかと思うかもしれません。猫を殺害することは、そんなに簡単なものではありません。猫も命がかかっているので、それこそ命がけで抵抗します。

筆者は、毎日、主に飼い猫の治療をしています。飼い主に愛されて具合が悪いから病院に来ている猫でも、治療が気にいらないと爪を出すし、噛むことがあります。そのため、洗濯ネットに入れてそれから診察することもあるのです。猫は、自分に危害を加える人におとなしくしていることはほとんどないのです。

猫は、もちろん防衛本能があります。この人は、自分に危害を与える人かもと思うと近寄っていきません。大丈夫だと思うと寄ってくるのです。野良猫の母親は、人間に嫌な目にあった子も多く、人間と距離を取るように子猫に教える場合もあります。

しかし、この市川市の河川敷にいた猫たちは、地域の人に心のこもった世話をしてもらっていたのでしょう。そのため、人間にそれほど強い警戒心を持っていなかったのかもしれません。

それで、このような残虐なことをする人に捕まって、殺されてしまったのでしょう。誤解のないように付け加えますが、地域猫をかわいがるなといっているのではないです。