若者の情報処理能力は上がっているのか

大学生を相手に授業を行って感じたことを述べたい。ここから先は完全に筆者の主観、印象論の域を出ないことを断っておく。

彼らは常日頃から、編集で冗長な「間」を極限まで排した早いテンポのYouTube動画に親しんでおり、倍速視聴の早口にも耳が慣れている。
筆者程度の早口など朝飯前なのだ。前編でも述べたように、彼らは日々、オンデマンド型の授業を容赦なく早送りしている。
こと喋るスピードに関して、生身の人間が話す一般的な意味での「適正速度」は、彼らにとっては明らかに「遅すぎる」のだ。

コメントにあったように、彼らは「情報疲れ」しているのかもしれないが、一方で「短時間で大量の情報をさばかざるをえない」状況にさらされることで、
単位時間あたりの情報処理能力は――少なくとも、筆者を含む20数年前の大学生に比べて――格段に上がっている。そう感じざるをえなかった。

現在の大学生が備える、年長者に比べて高い情報処理能力。
これは、年長者の多くが口にする「早送りなんかで観ても、作品の細かいところまで理解できないのでは?」という疑問に対する、ある種の反論材料になるのかもしれない。

無論、情報処理能力と作品観賞能力は別物であり、倍速視聴や10秒飛ばしによって「感情の消費量が節約される」という致命的な弊害(かつ、ある種の人にとってのメリット)は無視できない。
ただ彼らが、非倍速視聴者とはまったく異なる処理速度のCPUで映像に向き合っている可能性もまた、無視できない。
好むと好まざるとにかかわらず、映像の作り手は今後より一層、この事実に向き合うことになるだろう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91052?page=6